世間の人々というのは得てして、苦労や努力の部分には目を向けようとせず、光り輝く部分だけを見て、嫉妬や憎しみの感情を募らせがちである。葉石さんも、そうした人々からの根も葉もない非難や攻撃にずいぶんと悩まされてきたという。
「そうなんですよ。『女を武器にして酒場で仕事をとっている』とか、『あいつは枕営業している』とか言われました。
でも、相手が男性の場合は、それほど大変ではないんですよ。というのも、男性が私に対して持つ敵意や憎悪は、相手にされていないという気持ち、要するに自分のことをかまってほしいという気持ちから発していることが多いからです(笑)。だから一緒にお酒を飲みに行くと、だいたい解決するんです。
ところが、相手が女性の場合はそんなことをしても無駄。それどころか、今度はそれをネタにして、さらなる攻撃をしかけてきますからね。ですから、ひたすら無視し、勝手に言わせておくに限るんですよ。放っておけば、いずれは黙りますから……」
これは、「二都物語」である。もちろん、フランス革命期のパリとロンドンを舞台にしたチャールズ・ディケンズの愛と死の小説ではなく、現代の京都と東京を舞台にした葉石さんと相方さんの愛の実話だ。
葉石さんの書く文章には、しばしば「相方」という人物が登場する。相方とは、彼女の人生のパートナーである男性のことだ。「今は生きるのが楽です。相方は、京都の呉服屋の3代目で48歳。20代から社長をしている人なので、年齢よりも大人だなって感じます。
私はフリーで仕事しているわけですから、いつ突然、仕事がなくなるかわかりません。今後のことを思うと、不安で不安でどうにもならなくなり、自分を追い詰め、極限まで落ち込むことがあるんですね。でも相方は『夜、ものを考えるとろくなことがないから、酒を飲んで寝ろ!』と言うような楽天的な人なので、本当に救われています。相方と出会ったことで、二都で暮らす楽しさや、人との距離の取り方やその楽しさが分かりましたね」
京都と東京。二都を往復する生活の、特にどんな点が魅力的なのだろうか?
「私にとって、京都はインプットの場なんです。豊かな自然や、伝統的な町並みがすぐ身近にあるのが素晴らしいところです。二条城の周りをウォーキングしたりするのは楽しいですよ。それに対して東京は、仕事の場、アウトプットの場なんです。東京にだけいると、強い閉塞感を感じます。
二都を行き来することによって、オンとオフの切り替えが非常にうまく行くようになりました。その何よりの証拠に、最近は『キ――ツ!!』となることが少なくなりました(笑)」
だとすれば葉石さんこそ、言葉の正しい意味における”おひとりさま”なのではないだろうか?
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授