資生堂では、顧客から収集した意見や評価を真摯に受け止めるだけでなく、それらの貴重な声を安全で優れた商品づくりやサービス提供のための経営資源として実際に活用している。
コンタクトポイントは、店舗、お客さま窓口、Webがあるが、個々のチャネル特性に合わせて実に多岐にわたる情報が入ってくる。お客さまセンター長の伊與田智美氏曰く、「お客さま窓口に入る要望は非常に幅が広く、社員が気づかない貴重な意見が眠っている」と言い、お客さま窓口には年間約20万件もの情報が寄せられるとのことである。
また全国店頭のビューティーコンサルタントも接客時にうかがった「店頭でのお客さまの声」を専用携帯端末機からリアルタイムで入力できるようになっておりこちらも年間約13万件の情報が集まるとされる。その他、Webサイトからは、電子メール以外にも、ネット会員に限定されるが、要望などに関して投稿コンテンツが設けられており、一般の方々へもその投稿内容が公開されている。
以上のようにさまざまなコンタクトポイントから集まる30万件以上の情報は、商品開発やサービス向上を目的として商品企画・マーケティング、生産、研究部門など全社に反映し総合的に分析管理がなされている。実際にお客さまセンター内だけで約10人の情報収集・分析・管理に関わる担当者が配置されているという。
組織横断的に共有された情報はさまざまな形で「お客さま」に届けられる。例えば、「残りの使用量の目安が見える容器にしてほしい」「ゴミ袋の中でかさばって捨てにくい」など実際に使っているユーザーの目線で届けられた声に対応して商品のパッケージを変えたり、ちょっとした機能の追加などがなされたりしている。
このように集めた情報を組織的に加工し、具体的な組織的活動に結びつけ、見える形でお客さまにご提供することにより「お客さま志向」を態度で示し続けることが資生堂ブランドのイメージの重要な下支えになっていると考えられる。
後編では、集めた情報をさまざまな用途に利用している様子を伝える。
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森 一恵(もりかずえ)
早稲田大学大学院卒。現在同大学博士課程に在籍する傍ら、早稲田大学IT戦略研究所研究員として活動。主な研究領域は、マルチチャネルを活用した商品および販売戦略、マルチチャネルサービスマーケティング。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授