バイラルループ――FacebookからTwitterまで、優れた企業は今どう成長しているのか海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/4 ページ)

» 2010年10月27日 08時30分 公開
[鬼塚俊宏,ITmedia]

「口コミ」というのは「マスコミ」のもじりですが、人から人へと、うわさや評判が個別に伝えられていくコミュニケーションのことを指しました。しかし、インターネットが席捲する現代社会では、口コミは、もはや個別の伝承というレベルを越えて、最強最大のマーケティング手法の1つとなっています。誰かが感動して書いたブログの記事、思わずつぶやいたツイッターの一言、率直な感想を伝えたくてアップした商品レビューに始まり、さらに企業側で戦略的に展開される試供品やプレゼント、懸賞、先行販売、試写会、etc.etc.……。わたしたちは意図する、しないにかかわらず、ネット社会に参加するだけで、ほとんど無差別・強制的にマーケティングに参加させられていると言っても過言ではありません。

 今回は、バイラル型の古典的な成功例であるタッパーウェア社をはじめ、「バイラル式成功」「バイラル企業」について、本書に学びましょう。

Hot or Not? 好き? 嫌い?

インターネットでの成功を決定づけるのは、何よりも訪問者数です。専門的・趣味的なサイトは別として、商業ベースで運営していくには、より多くの集客のできるサイトでなければなりません。そこでは、コンテンツの意義や信念よりも、アイデアが先行することが多いものです。

 「2000年の秋、2人の20代の起業家、ジェームス・ホンとジム・ヤンはWebサイトに関するシンプルなアイデアを持っていました。それは『Am I Hot or Not』というサイトで、サイトを訪れた人が表示された写真の男性あるいは女性を魅力的だと思うか投票するものです。同年10月9日、Am I Hot or Notはインターネットから集めた数十枚の隠し撮り写真だけでスタートしました。ホンは、最初の訪問者として42人の友人を招待しました。しかし、その日が終わるまでに、3万7000人がサイトに訪れ、200枚以上の写真がアップされました。そして、翌日には10万人以上がサイトを訪れたのです。これはバイラル的成功の実例と言えます」

 10年ほどに、2人の若き起業家が始めたアイデアは、まさにその集客に大ヒットしたものでした。「スキ? キライ?」誰もが投票したくなりますよね。そして「これはどう思う?」と新たな候補をアップしたくもなるでしょう。この心理を突いたサイトは驚くべきアクセス数を記録していきました。

 「人気が急激に高まることによって回線容量にかかる費用が高くなるのを防ぐため、ホンとヤンは新しい写真のアップ先としてYahooを使い始め、商業用のウェブホスティングを立ち上げました。2人の若者はすべての面において正しい判断を下したと言えます。サイトを立ち上げてから8日目、Am I Hot or Notは1日180万のページビューを突破しました。この数字は、1週間前に数十人の訪問者で始まったことを考えると、驚異的と言えます。さらに、6週間のうちにページビューは300万、投稿写真枚数は3000枚にまで増加。そして、ホンとヤンは広告を使ってWebサイトを収益化しました。その結果、3か月以内で、Am I Hot or Notは大手ランキングサービスのトップ25Web広告サイトにランクインし、10万ドルの収益を上げました」

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