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» 2011年05月27日 07時00分 公開

Gartner Column:「創造的破壊」の意味を考えてみませんか? (2/2)

[小西一有(ガートナー ジャパン),ITmedia]
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非連続な変化が未来につながる

 少し、方向性が変わりますが、こんな話を聞くこともあります。「当社のIT開発や運用に携わってもらっているベンダーさんから、最近は特に提案が出てこないのです。彼らが、提案を持ってきてくれるような良いアイデアはないでしょうか」という相談です。

 わたしは、少し驚いてこんな風に尋ねます。「ベンダーさんから持ってきて貰いたいと思う提案とは何でしょうか?」「開発や運用のコスト削減のことですか?それとも、アプリケーションサイドからの、ビジネスの提案ですか?他に何か提案して欲しい領域がありますか?」と。

 彼らは、「何でも良いから提案が欲しい」と答えます。どんな提案が欲しいのかが分からない人に提案は持って行けないのではないでしょうか。更にわたしは尋ねます。「以前は、ベンダーさんからの提案が多かったのですか?」と。 すると、「以前は、新しいサーバやパッケージソフトが出てくれば、必ず提案を持ってきてくれたのです」とお答になります。「それは……提案ではなく、新製品のご紹介なのでは?? 」と心の中で思いながら、「貴社のビジネスに対する提案を求めたりしていませんか? 」と尋ねると、「もちろん、それは何時もガートナーさんが言っている通り、ビジネスに結びつかないテクノロジは無いと、わたしも考えていますから、ベンダーさんにも、わたしたちのビジネスに直結するテクノロジの提案を持ってくるように言っています」

 「あぁ……なるほど、自社ビジネスのアイデアをITベンダーに考えてくるように仕向けているのか……。ってことは、この人は、自分の仕事をITベンダーにまる投げしたのだな……。それじゃぁ、ITベンダーさんも提案できないよなぁ」「当社のIT部門は、上から下まで商社みたいな仕事をしていましてね……困りました」という言葉もちょくちょく聞いたりします。

 ITベンダーのリソースを調達して、ユーザーに紹介するという仕事を揶揄しての言葉かと思います。しかし、商社は、顧客先や調達先(こちらも顧客になるのでしょうが)のビジネスや製品、そしてマーケットの違いを熟知して「情報」を利益に変えています。「商社みたいな仕事」と言うならば、IT部門も同じように情報を利益に変えているでしょうか。

 さて、話を戻しましょう。自社のビジネスが、従来と全く同じ方法・環境で成長することはかなわないから、ITも変化するに違いないと予想するCIOが半数もいました。自社のビジネスがどのように変化すべきか、本当にビジネスを熟知しているでしょうか。そして、従来のビジネスの延長線に無い、新たなるビジネスを創造することができるほどビジネスや環境を理解して熟考しているでしょうか。

 わたしが、講演をする時によく使うフレーズがあります。「過去があって現在があることは、誰にも否定できない。しかし、過去から現在の延長線上にわたしたちの未来が本当に存在するかどうかは大いなる疑問である。恐らく、未来のどこかの時点で、この延長線上に無い非連続な未来に変化する必要があると思いませんか。そして、その非連続な変化を主導するのは誰でしょうか。それは非連続な変化が必要だと気付いたあなたが、変化を主導していくのです」と。

 シュンペーターの言った創造的破壊という言葉の意味をもう一度考える必要があるようです。現在の秩序を破壊して、新たなるビジネスやマーケットを創造することにより経済は発展させていくという意味を企業家である世界のCIOやITエグゼクティブの皆さまが、今、本気で考える必要があるというのが、わたしたちガートナーからのメッセージなのです。

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム (EXP)」の日本の責任者を務める。


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