なかなかヒット商品を作り出せず、これまで培ってきた技術力に自信を失いかけているように思える日本メーカー。しかし川上氏は、「技術力を捨てる必要はない」と断言する。
「日本企業が目指すべきは米国型の価値創造ではないと考えている。日本は米国でも中国でもない。技術力は大事にすべき。日本企業は小型化指向が強く、すり合わせ開発を得意としている。そこには今後も注力していくべきだろう」(川上氏)
むしろ、その技術力に加えて顧客志向を強めていくべきだというのだ。各社が同じ方向性で競い合っていけば同質化していってしまい、過当競争をもたらす。顧客志向を強化することで各社が独自の価値を作り出すことができ、競争回避へ向かっていくことが望ましい姿だ。
例えば電子ブック端末についてみれば、日本ではkindleが登場するよりずっと早い2000年代初頭に電子ブック端末を各社が売り出していた。しかし結果として定着することなく消え去った。こうした過去の日本の電子ブック端末とkindleとの最大の違いは、コンテンツ数にある。
「エジソンは電球を実用化しただけでなく、発電機や送電技術などトータルな電灯システムを作っていた。イノベーションはモノづくりに留まらない。その点を見落としてはいけない」と川上氏は指摘する。モノづくりだけでなく、同時にビジネスモデルを打ち出していくことができたなら、そして市場を作り上げていけたなら、ひょっとしたら日本の電子ブック端末が世界を席巻していたかもしれない。
「性能で競う他社と同一軸での競争を避け、新しい遊び方を提案することでより多くの売上を実現したWiiなど、日本企業の顧客志向事例は海外の学会でも取り上げられる。アメリカではベンチャー企業が担う破壊的イノベーションを、日本では既存の大企業が次々と実現している。日本の企業は、モノづくりの水準そのものは変えることなく、マーケティングやデザインもバランス良く力を入れて、国内市場への過剰適応を避けつつ、かつ日本ならではの新たな価値を創造していく必要がある」(川上氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授