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» 2011年09月12日 08時00分 公開

トークライブ“経営者の条件”:「多様性のある企業ではコミュニケーション能力が大事。社員一人ひとりまで、きちんと話を聞く」――シーメンス・ジャパン株式会社 代表取締役社長兼CEO 織畠潤一氏 (2/2)

[岡田靖,ITmedia]
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GEで経営者としてのキャリアを踏み出し、グローバル企業の日本法人社長を歴任

 こうして1999年、織畠氏はゼネラル・エレクトリック(GE)に入社する。「会社の強さに加え、リーダー育成が充実しているなど人を大切にすること、そして提示された業務が面白そうだと感じた」というのが、GEを選んだ理由だ。そのGEでは、GEメディカル・システムズ-アジアでBD(事業開発)とPACS(医用画像管理システム)の事業本部長、CT事業本部長、サービス事業統括副社長などを歴任、そして日本GEプラスチックスの社長に就任し、GEアジア経営企画担当副社長まで、6年間で6つのポジションを経た。

 「マネジメントのフレームワークをMBAで習得し、そしてマッキンゼーで実地に学び、GEで実践することになったが、スタッフとしてではなく、責任を持ち、自分自身がリーダーとして決断するようになると、だいぶ違うと実感した」(織畠氏)

 GEでリーダーとしての実績を積んだ織畠氏の次のステップは、GEで経験したヘルスケア分野の企業、タイコヘルスケア。2005年、タイコヘルスケアグループジャパン代表取締役社長に就任した。そして後には、同社からスピンオフしたコヴィディエンでインターナショナル・プレジデント兼日本代表を4年間務めている。

 「タイコヘルスケアは、ちょうどエクセレントカンパニーを目指して変わろうとしていた頃だった。そしてコヴィディエンは一兆円規模のスピンオフ企業。GEに比べれば規模も数十分の一、良くも悪くもエスタブリッシュされていない、ベンチャー的な新興企業の雰囲気もあり、GE時代とはまた違った経験をすることができた」(織畠氏)

 そして2011年1月に現職のシーメンスへ移った。ヘルスケア、エナジー、インダストリーの3セクターで事業展開するグローバル総合エレクトロニクス企業である同社は、織畠氏が過去に経験してきた分野や、深く興味を持つ分野の企業という点で、過去のキャリアを生かせるという考えがあったようだ。シーメンスでの経営について、氏は次のように語っている。

 「私としては初の欧州系企業。シーメンスとしては、グループ日本代表としては初の日本人社長。まだシーメンスには、クラスター(地域)統括といえばドイツ人社長が多い。そして、『良い品質の商品を作れば必ず売れる』といった感覚もまだあるように感じられる。こういった点は、日本企業にも似た印象がある。ちょっとステレオタイプ化するが、GEは人材育成、そしてマーケティングが強いのに対し、シーメンスは研究開発、市場に問うような感覚が強い。どちらかというと私は米国系企業の経験が長いので、これまでとは違った感覚もあるが、米国風と欧州風、両方の良い点を取り入れていきたい。それに、経営者として押さえるべき点でいえば、共通する部分も多いのではないかと思っている」

グローバル企業の地域統括責任者というマルチカルチュラルな職務環境

 こうして織畠氏の経歴をみてみると、日本や米国だけでなく、多彩な地域で活動していることが分かる。経営に携わるようになってからは、単なる日本法人代表というだけでなく、GEではアジアパシフィックであったり、コヴィディエンでは東欧や中近東までも含む非常に広い地域を統括するような職務もあった。当然、「マルチリンガル、マルチカルチュラルな環境での仕事」だ。こうした環境の中でのリーダーには、どういった姿勢が求められるのだろうか。

 「語学はツールに過ぎない。対話をするときは、聞く姿勢とか、伝えようとするものとか、そういう中身が大事。必ず、担当する各地域の人々から直接話を聞くようにしている。すべて実現できるとは限らないが、少なくとも一度は検討した上で、その結果を必ず返答するという姿勢で臨む」と、織畠氏は言う。

 地域ごとにビジネス環境は異なる。商品に対するニーズも違ってくる。例えば日本であれば、他の地域では問題ないとされる品質の商品でも、顧客に受け入れられないことが往々にしてある。日本法人の立場としては、このような市場・顧客・現場の声を届け、ニーズとのギャップを本社に訴えて理解させていく必要がある。

 「単に本社を突き上げるだけでなく、本社に日本をもっと理解してもらいながらも、マネジメントの一員として全社で改善・成長できるようにするのも、私のような立場の者の仕事。例えば品質問題では、日本ローカルで全品検査をしたり、日本向けの生産ラインを別に設けてもらうなど、いろいろな暫定措置を提案・実施した上で、日本市場の高い要求に応えていくことが会社の将来のためにもなる、と伝え、全体で品質・プロセスを改善していく、といったこともしてきた。そして、このような状況を日本のチームや顧客にも伝えて、少しずつでも本社側に変化・進捗があるのだと分かってもらうことも大事」(織畠氏)

 こうしてみると、織畠氏の経営ではコミュニケーションを特に重視しているように見受けられる。マルチカルチュラルな環境の中で地域や立場の違いを埋めるには、相手に伝えるだけではなく、相手を理解し、それを他に伝えていくことも重要だ。

 「経営にコミュニケーション能力はとても重要だと思う。本社や投資家、国内では部下、社員一人ひとりに至るまで、相手はさまざま。部下やまわりに対して指示をするだけでなく、相手の言い分を聞き出す能力も必要だと考えている。特に多様性のある企業では、相手を理解することが大事だ」(織畠氏)

 そして、その企業で働く多種多様な人々の行動規範となり、その活動の裏付けとなる企業のバリューやカルチャーの存在を特に重視している。

 「製品を作り出しているのは人間だし、マーケティング・営業などもすべて人間が行っている。バリューやカルチャーが、その人たちを伸ばしていく土壌になっていく。だからこそ社内でバリューやカルチャーを共有していくことが重要。グローバルで定義されているバリューを踏まえつつ、自分の言葉で伝えていくのが、トップとしての役割だ。カルチャーも単一ではない。組織が大きく、多様性があればなおさらだ。そこで、ダイバーシティを求めながらも一体感、絆のようなものを求めていく。例えばシーメンスなら『シーメンスとしての価値を高め、成長していく』ことを追い求めていくのが、トップの仕事ではないかと思う。その上で私は、常に私なりのリーダーであろうとしている。まだまだ自分自身、成長の余地がたくさんあるとも感じている」(織畠氏)

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