経済界から政治家を――沈みゆく日本を救うためにトークライブ“経営者の条件”

なぜ経済界から政治の世界に出るのか――「出ないと日本が沈むから」。こう話すのは、神戸リメイクプロジェクト代表、樫野孝人氏だ。

» 2010年10月14日 08時30分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


 ITmediaエグゼクティブでは、連載「ビジネス著者が語るリーダーの仕事術」で経営者JPと連携し、セミナー企画「トークライブ“経営者の条件”」を開催している。第4回は、神戸リメイクプロジェクト代表で、2009年には神戸市長選に立候補した樫野孝人氏が登場した。

 なぜ経済界から政治の世界に出るのか――「出ないと日本が沈むから」。

 こう話すのは、神戸リメイクプロジェクト代表、樫野孝人氏だ。樫野氏は2009年、Webサイト制作最大手企業に育て上げたIMJの社長を辞して、神戸市長選に立候補した。結果は、優勢が伝えながらも7800票差で涙を飲んだ。

樫野孝人氏

 「10対0で負けていた状態でスタートし、9回表に何とか逆転したのに、その裏エラーを3つもしてサヨナラ負けした感じ」と振り返る同氏。実際に、最終日にはテレビ局も「樫野氏有利」と報道していた。

 「前日の段階では勝てると思っていた」ものの、投票日の最後の24時間の詰めの甘さや、予想以上に投票率が伸びなかったことが大きく響いた。また、初めての選対本部も祝勝会の準備を始めるなど、油断があったと苦笑いする。駅前での演説に最初は無視され続けたものの、連日繰り返すうちに選挙後半には大きな声援をもらうようになった。そんなことからも、わずかなすきが生まれたようだ。

 だが、詰め甘さもあったこの敗北も、樫野氏のビジネスマンとしての実績には影響を及ぼさない。仕掛け人としての樫野氏は、大胆かつ繊細、緻密(ちみつ)なやり手のようだ。「最初から政治家になるつもりだった」という言葉通り、ビジネスで培った経営能力をテコに、政治家としての人生に賭けようとしている。

 樫野氏には、これからの日本を救う政治家は、経営の感覚を持って運営ができる経済界から出るべきだという持論がある。特に「新人国会議員は計722人の“ペイペイ”の1人にしかなれないが、県知事や市長は社長と同じ」と話すように、国会議員より地方自治体の首長を目指しているのが特徴だ。このあたりは、さながら社長のように大阪府を運営する大阪府知事の橋下徹氏などを見ると、イメージしやすい。

 樫野氏は、首長の観点から見た日本の将来について「47都道府県の知事と18政令指定都市の市長が本当の意味で日本を変える原動力になる」と指摘する。将来的には、自分が日本を変えてやるという気概も伝わってくる。

 経営者として豊富な実績を持つ樫野氏は、神戸大学経済学部を卒業後、「能力を生む能力が組み込まれている組織」であるというリクルートに入社した。福岡ドーム(現ヤフードーム)のコンサルティングチームやマイケル・ジャクソンのコンサートなどを手掛けるイベントプロデューサーとして活躍。その後、1997年にメディアファクトリーで映画事業を立ち上げる。映画事業で手掛けた『バトルロワイヤル』では、回収率は500%以上、難しいといわれた興行シルク・ド・ソレイユの『アレグリア』もプロデューサーとして成功させた。

 良いプロデューサーの条件を聞かれた樫野氏。答えは「負け試合を引き分けに持っていく力」。悪いときのリスクをヘッジしており、基本的には負け試合はしないのがポイントだ。

 例えば、アレグリアの場合「当日券だけで勝負すると失敗する可能性が高くなると考え、協賛スポンサーを付けておこうと考える。その段階で、チケットが4割売れれば損益分岐点を超える。さらに、2割は団体セールスでさばく。これでほぼ負け試合にはならない」。これに加えてグッズ収入や飲食収入などを全体収支管理をしてリスクを回避したエピソードを披露した。

 映画プロデューサーには、「映画制作に入れ込むタイプ」と「映画ビジネスを手掛けるタイプ」がいるという。 良いプロデューサーは「創りたい映画を創るのではなく、社会に求められている映画、観客が観たい映画、次の方向を示唆する映画を提供する」(同氏)。観客は間違いなく映画を楽しみに来ているのだから、「ビジネスプロデューサー」が今以上に必要とされているとする。

 ビジョンを掲げながらも、成功への緻密(ちみつ)な計算、事実を見極める冷静さ、地道な努力など、成功に求められる要因を漏らさず持ち合わせる同氏。こうした経済人が、迷走し続ける日本の政治の世界に飛び込むことの意義は大きい。さらにいえば、「油断が大失敗につながる」という神戸市長選での手痛い経験も、貴重な財産の1つとして加わった。政治家・樫野氏への期待はますます高まりそうだ。

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