最後に藤井氏は日本再生の処方箋ともいうべき指標を語った。
まず挙げられるのは、統合によるグローバルトップ企業の育成だ。日本は過当競争に陥るほど企業が乱立しているが、前に述べた事後的対応を重んじる国民性からか経営が赤字にならないと企業統合などの抜本的な対策がなされない。米企業の場合は株価の変動などの先行指標によって企業統合が促されるが、日本はそのような動き方はしないのだ。そのため企業統合や業界再編のスピードが、海外と比して極端に遅く見えてしまうのだと藤井氏はいう。
次に同氏は、イノベーションを起こすことによって付加価値を生み出していくことが必要だとも語った。薄利多売のビジネスモデルでは、伸び続けるアジア勢に対抗することは難しい。また企業統合などの動きが早い韓国、台湾、中国などの企業には市場の上位を占められてしまうことになる。付加価値を創出していくためにも、自社の強みをいち早く知的財産化し、それをオープンな環境で展開していくことが必要だと藤井氏はいう。
知的財産はグローバルで連携できるプラットフォームで売り出すことが求められる。ただ、今のところ日本は優れた知的財産を持ちながらそうしたプラットフォームを作れないでいるとも同氏は述べた。
人材面ではマインドの活性化と起業風土の養成について取り上げた。今の世代は外国に対して劣等感がないためハングリー精神に欠けると懸念しながら、藤井氏は次のように話した。
「同じような境遇の人間をいくら集めてもマインドが変わることはない。そうした世代を活性化するためには異なる人種をどんどん取り込んだり、ガバナンスを変えたりして新陳代謝を促すことが必要だ」(藤井氏)
次に、起業を促進する土壌を作る必要があると藤井氏はいう。
「40代後半から50代半ばで、ある程度の地位に就いた日本のサラリーマンは起業するメリットよりそのリスクばかりに目を向けがちになっている。彼らが小さな決断しかできない状況を放置するのは大きなカントリー・リスクといえるだろう」(藤井氏)
講演後の参加者を交えたディスカッションでもこの点は1つの話題となった。人材を囲い込むことなく積極的に野に放ち、起業させる風土が日本には必要だという藤井氏の見解に皆同意の表情を見せた。
セミナー終盤で藤井氏は、昨今議論の的となっている英語公用語化問題について触れた。日本人同士が英語で会話をするという状況が必要なのではなく、国内外を問わず優秀な人材を確保するには、英語が公用語であることを企業が表明する必要があるという。いわれてみると当然だが、習ったこともない日本語が公用語では海外から優秀な人材は集まるはずがない。
最後に藤井氏は、デジタル時代に取り残されないよう、異なる環境で生き抜いていく強さの必要性を再度強調しながら「日本独特の体質をうまく変えていくことができれば、デジタル時代においても必ず生き残ることができると信じている」と締めくくった。
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明治学院大学 経済学部准教授