連載
» 2011年11月25日 08時00分 公開

伸びる会社のコミュニケーション:情報だけでは価値がない。何を語るべきか! (2/2)

[松丘啓司(エム・アイ・アソシエイツ),ITmedia]
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情報格差のない社会への変化

 コミュニケーションを発信する人は、情報と意図を同時に伝えますが、その時々によって情報にウエートがある場合もあれば、意図にウエートがある場合もあります。

 「どこから来ましたか?」と聞かれて「日本からです」と答えるのは、情報にウエートがある発言です。一方、このコラムに重大なミスがあることを発見したわたしが、「しまった」と叫んだときには、意図にウエートがあります。しまったという気持ちを、言葉にせずにはいられなかったのです。

 結論から述べると、今日のコミュニケーションの多くは情報に偏り、意図が軽視されてしまっています。そして、そのことが、組織の変化や創造性を欠如させているのです。

 インターネット社会の進展によって、今日人々は過去に得られなかったような種類と量の情報を簡単に手に入れることができるようになりました。社会における情報格差が急速になくなりつつあります。つまり、インターネット社会とは、情報が価値を持つ社会ではなく、情報を持っているだけでは価値がなくなる社会なのです。

 得られる情報量が膨大になったとき、それらを論理的に分析する技術が重要になります。けれども、そうした分析に基づいて加工された情報の価値はそれほど高まりません。なぜなら、誰が述べても大差のないものになるからです。皆が同じ情報を持ち、同じ分析手法を用いたとしたら、似たような結果が出てくるのは当然です。「違い」のない情報を伝達するだけのコミュニケーションから、大きな変化が生まれることはありません。

 今日、価値の源泉は情報そのものではなく、それを伝える人の「意図」の方に移ってきているのです。

情報価値を高めるには

 意図は「選択」です。わたしたちが「〜すべきだ」と主張するとき、主張したことと、しなかったことの間で、選択を行っているのです。問題はその選択が、これまでの常識や論理的な公式といった人の外側の基準で行われるのか、その人の内発的な「価値観」によって行われるのか、という点にあります。

 価値観とは、その人自身が何を大切にするかを決定している基準です。例えば「わたしは他人とは異なるオリジナリティを大切にする」とか、「人との繋がりが何よりも大切だ」とか、人によってこだわりの基準が異なります。その価値観の違いが、その人ならではの「観点」を形成します。

 同じ物事を見たとしても、観点が異なれば、見え方が異なります。例えば、人口減少社会の進展という環境変化を見たときに、「もっと効率性を追求しよう」と主張するのか、「より付加価値を高めることが必要だ」と主張するのかは、その人の価値観によって異なります。価値観に優劣はないため、どちらが正しいという正解はありません。

 内側の価値観が言葉に表現されたとき、それは誰が言っても同じことにはなりません。だからこそ、「違い」が生まれます。つまり、ただ情報だけを述べるのではなく、価値観に基づく意図が言葉で表現されたとき、「情報価値」自体が高められるのです。

 例えば、あるマネジャーが転勤で別の部署に異動してきたとき、職場があまりにも静かだと感じたとします。そのとき、「このチームは会話が少ない」と客観的な事実だけを述べるのと、「一人ひとりの個性をぶつけ合えるチームにしよう」と、価値観に基づく意図を表現するのとでは、後者の方が、価値の高い発言であることが分かると思います。

 自分の価値観に基づいた主張を行うためには、自分の軸をしっかりと持っていなければなりません。なぜなら、価値観を表現することにはリスクを伴うからです。

 事実をただ述べることに、リスクはありません。自分の言葉の根拠は外側にあるからです。けれども、自分の内側の価値観を表現した責任は、自分で取るしかありません。そのため、自分の軸がなければ、ついついリスクを避ける道を選んでしまいます。

 つまりコミュニケーションへの参加者が、日頃から自分自身の内面にしっかりと向き合って、自分ならではの観点を研ぎ澄ます訓練を行っていなければ、組織の発する情報価値は高まらないのです。

著者プロフィール:松丘啓司(まつおかけいじ)

エム・アイ・アソシエイツ株式会社代表取締役

東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2003年に独立し、エム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社では、人と組織の内発的変革を支援する研修、診断、コンサルティングサービスを提供している。主な著書に、「アイデアが湧きだすコミュニケーション」「論理思考は万能ではない」「組織営業力」などがある。


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