急ぎで依頼したはずの仕事を、部下がいつまでたってもあげてこない。部下がさぼっているのか、あなたが舐められているのか、それとも――
日本人はものごとを明確に表現しないことがよくある。私が敬愛してやまない東海林さだおさんも、居酒屋で「ビール2〜3本、やきとり5〜6本!」と注文してもなんとなく通じてしまう、というようなことをエッセイに書いていらっしゃる。
仕事においても「あいまいに表現する」ことが実は日常的にある。例えば上司が部下に「これ、できるだけ急いでやって」と指示し、部下が「はい、分かりました。急いでやります」と返事するといった場面。
この場合、双方にしっかりとした「あ・うんの呼吸」が成立していれば、部下は「上司が期待した通りの“急いで”」を実現し、成果を出すはずだ。しかし、物事の捉え方も価値観も、言葉に含める意味も理解度も、人それぞれ何もかもが異なるので、そうそううまくはいかない。
部下が成果を出してきたのが上司の想定よりうんと遅くて、「急いで、と言ったじゃないか」となり、部下も「急いでやりましたけど」と不満に思うかもしれない。指示する側も指示される側も「期限」を明確にしないままコトを進めると、こういうことが起こる。
あるリーダーから聞いた話。
リーダー:この作業を急いでやってほしいんだけど
メンバーたち:はい、分かりました
リーダー:ええと。今の“急いで”は“いつまでに”やろうと思った? 1人ずつ教えてくれる?
すると、メンバーはそれぞれこんな風に答えたそうだ。
メンバーA:今週中だと思いました
メンバーB:2時間以内くらいかな、と
メンバーC:今日中に片付けなきゃと感じました
メンバーD:あさってまでに、と頭でスケジュールを組み立てました
リーダーはとても驚いた。
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明治学院大学 経済学部准教授