「逆から考える」――限られた時間内に最大のアウトプットを出すためのヒントビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

目的を忘れて手段に走る、顧客視点を忘れて自社の論理で商品を作ってしまう。そんなことが起こってはいないだろうか。ビジネスでも人生でも、最終目的を意識することで手段を最適化することが必要だ。

» 2012年08月30日 08時00分 公開
[細谷功,ITmedia]
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 「逆から考える」……コンサルタントがよく使う思考法の一つです。もちろんこれは全てのビジネスパーソンに有効な考え方ですが、特に重要になるのは「限られた時間内で最大のアウトプットが求められる」場合です。ビジネスリーダーもそうですが、部下も含めた職場のメンバーでこの考え方を共有しておくのは非常に重要ですので、その概要とメリット、及び注意事項などについて解説します。

「逆から考える」こと

「すべての仕事は[逆]から考えるとうまくいく」

 「逆から考える」というのは最終目標なり目指す姿を始めに心に描いてしまうということです。新しい商品や仕事のやり方を考える場合、「とりあえず情報を集める」ところから始めて現状の課題を抽出してそれに対する施策を考えるというのが一つの方法ですが、このアプローチの危険性はデータを集めたり分析をしたりことに労力をかけすぎた挙句に結局何の結論や施策も出ない危険性があることです。

 「逆から考える」というのは、まずどういう施策が有効なのかというのを、情報が十分にない状態でも仮の結論(仮説)として初めに設定してからそれを検証するのに必要なデータを集めていく方法です。これによって情報収集や分析作業に無駄がなくなるとともに何もやらずに終わってしまうリスクを最小限にできます。

 もちろん仮説を立てるためにはそれなりの経験や知識は必要ですが、それでも「とりあえず情報を集めてから」という姿勢を捨てて思い切って仮の結論を置いてしまうことが重要になります。

 「逆から考える」というのはさまざまな場面で応用できます。時間軸を逆転させて現状課題から考えるのではなくあるべき将来像から考えること、手段から考えるのではなく目的から考えること、(コミュニケーションや商品開発の場面で)自分(自社)視点から考えるのではなく相手(顧客)視点から考えるといったことです。これらは全て「最終目的を意識することで手段を最適化する」ことにつながります。

なぜ「逆から考える」のが難しいのか?

 ところがわれわれの自然な思考回路というのはこれとは真逆の動きをするようです。目的を忘れて手段に走ってしまう、顧客視点を忘れて自社の論理で商品を作ってしまう、組織の論理が優先して顧客がないがしろにされてしまうといったことはどこの会社でも日常頻繁に見られることでしょう。こうしたわれわれが自然に持っている「思考の癖」を矯正するためにも「逆から考える」というのは日頃から強く意識しておく必要があるといえます。

 またもう一つの敵は「完璧主義」です。「逆から考える」というのは情報が少ない状態で大胆な仮説を立てることが必要になりますが、普段から完璧主義で「万全の自信が持てるまで情報収集をしてから結論を出す」人というのは、これがなかなかできません。入学試験にあるような「正解のある問題」を解く場合にはこうした姿勢は決して間違ってはいませんが、商品開発や新規事業のアイデアをまとめる場合においては、正解はそれこそ「神のみぞ知る」です。スピードや実行が重視されるビジネスの環境では、「60点」でもいいからまずは仮の結論を出してみることは重要です。

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