このサービスを実現するためには、各国の通信会社との提携や、各国政府への申請が必要だ。
「直球勝負で、これらを地道に進めた。コンタクトできた各国の通信会社からは、われわれの日本における販売実績が評価され、提携が進んだ」(佐野氏)
現地の通信会社は、現地にいる人に対してはサービス利用の働きかけができるが、出張や旅行などで海外から訪れる短期滞在者に対してはアプローチするチャネルを持たず、プロモーションが難しい。販売力のあるビジョンと組むことは、渡航前から日本語でサービス利用の働きかけができることとなる。現地の通信会社にとって新たな市場の開拓になり、メリットが大きい。現在は世界205の国や地域でサービスを展開するまで拡大した。
「各国の通信事業者と正規の契約を結び、これほど広範囲でサービスを提供しているのは当社だけ」(佐野氏)
エイチ・アイ・エスなどの旅行会社とも連携し、海外のオフィスにブースを出すなどの展開も行う。「旅行会社とも利害が一致している」のだという。
「旅行会社も旅行客に、旅先でネットを活用してほしいと考えている。ネットを使えば手軽にオプショナルツアーの申し込みができ、スマートフォンで使える地図情報があれば行動範囲が広がり大変便利だ。また、旅の風景の写真や感想をソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などで共有すれば、そこに旅行してみたくなる人も増える」(佐野氏)
海外旅行客だけでなく、法人契約も増えている。月に約1万件の利用があり、そのうち6割前後が法人による利用でないかと佐野氏はみている。今や、日本企業が海外に開発や生産拠点を持つのは当たり前になっており、海外出張者も多い。
「ローミングの料金は高いだけでなく、個人の携帯電話料金から分離して会社に請求するのが大変だし時間も掛かる。ビジョン グローバルWiFiなら、請求も簡単だ。一般企業だけでなく、学会などで海外出張が多い病院や大学などの利用も増えている」(佐野氏)
「まだまだ拾いきれていない潜在顧客は多い。日本から海外渡航する日本人は年間のべ約1700万人。非常に大きな市場だ。現在の(ビジョン グローバルWiFiの)月間利用者を5万件に引き上げたとしても、年間60万件なので1700万人に比べれば伸びる余地は大いにある」(佐野氏)。
佐野氏がターゲットとして見ているのは、日本からの出国者だけではない。同じ課題を抱えているのは、何も日本人旅行者だけではなく、例えば中国では年間1億5000万人が出国している。日本の10倍近い市場だ。
現在、海外に行く中国人に同様のサービスをテスト運用しているが、非常に評判が良く近く本格展開する予定だ。韓国の仁川国際空港でも、まもなくサービスを開始する。ハワイ、韓国、台湾やタイでは既に日本人渡航者向けに、現地空港での貸し出し・返却サービスや、ホテルへの配送サービスを行っているので、サービス提供の仕組みは既にある。
「日本人以外にもターゲットを広げたい。まずはアジアを中心にサービスを展開し、アジアに来る全世界の人にグローバルWiFiを利用してほしい。将来は世界中の人が、いつでもどこでも、自国にいるときと同じようにインターネットを楽しめる環境を提供し、シームレスな世界を作りたい。サービスを開始してから12カ月。まだ同社の売上高約90億円に占める割合は低い。今後はもちろん既存事業も伸ばしていくが、その中にあってもグローバルWiFi事業の構成比を2013年度は売り上げの20%、来年度は40%を目指し、ここ2、3年で50%を占めるような主力サービスに育てたい」と佐野氏は意気込む。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授