「海外でも快適にスマホを使いたい」ニーズ汲んだサービスでグローバル展開目指す(1/2 ページ)

急速に普及が進むスマートフォン。しかし、海外旅行中や出張中は、思うようにインターネットを使えないことが多い。ビジョンはここに着目し、現地の通信業者にフルに対応したWiFiルータのレンタルサービス「グローバルWiFi」を世界で展開している。

» 2013年01月29日 08時00分 公開
[聞き手:浅井英二、文:大井明子,ITmedia]

 今や、人口に対する携帯電話の台数は100%を超え、そのうちスマートフォンは2割強を占めているが著しく増えている。こうした急速な広がりの一端を担ったのが、1995年創業の通信ベンチャー、ビジョンだ。同社は法人向け携帯電話、電話回線などの販売を中心に売り上げを拡大し、現在ソフトバンク関連の法人販売実績では国内第1位だ。

スマホや回線の法人販売で成長

ビジョンの佐野健一社長

 通常の営業部門やWebマーケティングを行う部門、電話営業を行うコールセンターに加え、既存顧客のサポートだけを行う専門部署を設置している。創業者でもある佐野健一社長は、営業コストを削減しながら顧客満足度を上げ、利益を確保する方法を追求した結果だという。

 佐野氏は、「“売ったら終わり”ではない。新規顧客を開拓することはもとより、既存顧客を大切にして利用するサービスを増やしてもらうことはとても大切だ」という。

 同社では、既存顧客には継続して、当社のサービスや活動内容を紹介する冊子を送るなどサービス利用にまつわるさまざまなサポートも行う。例えば、客先のオフィスが移転する際、通信に関わる諸手続きなど総務部のサポートも行っている。

 これらの取り組みの結果、今では売り上げの約4割がWebプロモーションによるインバウンド、4割がコールセンターによるもので、残り2割は既存顧客のサービス追加購入や紹介によるものになった。アフターケアの評価も高く、ソフトバンクの代理店の中では解約率、クレームの数ともに最も低いという。

「“パケ死”が怖くて海外でスマホが使えない」の声を受けサービス開発

 これまでの同社の主力事業は、NTTの光ファイバー、ソフトバンクの固定回線や法人向け携帯電話契約、キヤノンのOAサプライの販売など。つまり、他社のサービスを取り扱うことが中心だった。しかし、電話回線、携帯電話といった国内のみに留めた市場ととらえず、既存事業とのシナジーがあり、事業を大きく拡大させる手段も考えたい。その中、新たな主力事業として同社が力を注いでいるのが、2012年2月に開始した「グローバルWiFi」だ。

 このサービスを開発するうえできっかけになったのは、スマートフォンを利用する顧客のさまざまな「声」だった。この中で佐野氏は、海外出張での使い勝手に着目した。

 「“海外でスマートフォンを使っていたら、請求が数十万円になってしまった”などの、いわゆる“パケ死”と言われる状態で困っている人がいたほか“パケ死が怖くて海外でネットが使えない。どうしたらいいのか”などの相談もあった」(佐野氏)

 国内では快適な通信環境を楽しんでいても、日本の携帯電話を海外で使用すると、通常は「ローミング」といって帯域制限のかかったサービスになるケースがほとんどで、通信速度が遅く国内のおよそ1/10から1/5程度になってしまう。

 「旅行はもちろん海外に進出する企業が増えており、困っている人は多い。こうした料金の問題や通信速度の問題は、解決しなければいけないと強く感じた」(佐野氏)

 ビジョンの「グローバルWiFi」は、国ごとに正規通信サービスを使えるよう設定された、モバイルWiFiルータをレンタルするサービスだ。渡航者は手持ちのスマートフォンやパソコンを接続することで現地インターネットを利用できる。

 金額は定額で十分なデータ利用量が使える上に、ローミングと違って帯域制限もない。現地のネットワークをそのまま使用できるので通信速度も高速で、快適にインターネットを楽しむことができる。ルータは、渡航前に郵送や空港カウンターで受け取りや返却ができ、一部の国では現地でも借りることが可能だ。

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