エイベックスがネットを使ったコンテンツ配信サービスの構想を始めたのは2007年末のこと。「音楽市場が縮小し、CDが年々売れなくなる中、人々がコンテンツ情報を集める場はリアルのレコードショップからネット上へと移ってきた」ことから、「今後はネット上で人が集まる場を作る必要があると考えていた」(村本さん)という。
また、エイベックスの映像事業部が手がけた映画「レッドクリフ」での“苦い経験”もサービス開発のきっかけとなった。「映画ビジネスは、収益の半分を映画館が持っていく。既存のプレイヤーが儲かるばかりで、収益を拡大するのが難しかった。しかも、シリーズものでない単発の作品では継続的な収益を得られない。ビジネスとして安定させるためには、月額課金などを通じた“蓄積型”のサービスを行う必要があった」。そこで新たなコンテンツ提供の場として選んだのが「モバイル端末」だったという。
2009年には第1弾として、iモード上でオリジナル作品を提供するBeeTVをスタート。コンテンツ制作費がかさんで初年度に40億円の赤字を計上したものの、「投資の時期としてとらえていたので、社内で特に問題視されることはなかった」という。「当時はモバイル向けの良質な動画コンテンツがほとんどない状況。まずはユーザーに『モバイルでもこんなにいい作品があるんだ!』と感じてもらうことに注力した」
こうした施策が奏功し、3期目で黒字化を達成。2011年3月にはスマホでの視聴にも対応させ、11月にはdビデオ(当時はVIDEOストア)をオープンした。現在、dビデオとBeeTVを合わせた会員数は500万を超え、「エイベックスのビジネス全体から見ても存在感が高まっている」という。
dビデオはエイベックスだけでなく他社のコンテンツも配信しているが、“定額制で見放題”という提供方式について「(コンテンツ制作会社から)反発はもちろんあった」と村本さんは振り返る。「制作会社の人たちからは『もともと映画館で1800円で放映しているものを、他の動画と合わせて見放題で提供するのは難しい』という声が多かった。だが『見てもらえないより見てもらった方がコンテンツにとっても幸せだろう』と説明すると、次第に協力を得られた。また、dビデオの会員数が増えるにしたがい、協力してくれる制作会社も増えてきた」
今年2月にはソフトバンクとの合弁会社・UULAを通じ、ソフトバンクモバイル端末向けに定額制総合エンタメアプリ「UULA」をスタート。「UULAもdビデオと同様に、ソフトバンクのスマートフォンが売れれば売れるほどユーザーが増える仕組み。開始から1カ月で既に30万ユーザーを突破している」と、UULAの運営も手がけている村本さんは自信をみせる。
今後、dビデオではオリジナル動画をさらに強化し、UULAでは音楽関連機能を強化するなど、それぞれ別々の施策でサービスを拡大させていく考えだ。「dビデオとUULAはともにエイベックスが手がけているが、それぞれ異なるサービスとして運営している。互いに切磋琢磨しながらよりよいサービスを目指していく」(村本さん)
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明治学院大学 経済学部准教授