アベノミクス効果で業績がアップした企業は新卒採用に積極的に乗り出しているが、求めているのは数より質。採用方法はどのように変わるのか。
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経団連が大学生を対象にした企業の採用ルールで、会社説明会などの解禁時期を大学3年生の3月(現行3年生の12月)、選考開始を4年生の8月(同4年生の4月)に見直すことが決まりました。このルール改訂は学生の学業優先のためと言いますが、本当に時期をずらすだけで、いまの新卒採用の問題が解決するのでしょうか。
アベノミクス効果で業績をアップした企業は、新卒採用に積極的に乗り出しています。しかし、採用担当者が口をそろえて言うことは「数より質」です。つまり、採用枠を増やしたとしても、優秀な学生でなければ採用しないため、いまだに採用計画数未達という状況が、中小企業に限らず大手企業でも続いているのです。
会社の業績を伸ばすのは、カネ、モノ、ヒト、情報ですが、成長企業にとっては、何よりヒトの質がものを言います。そのため、数より質を重視するという新卒採用は間違っていません。ただし、数より質の採用を求める場合、これまで常識とされていた採用方法が足かせとなっているのです。
「自社の採用プロセスを説明してください」。この質問に答えられる人は意外に少ないのです。経営者であってもしかりです。採用は人事部が行うものと決め込んでいる場合が多いからでしょう。数だけを採用するなら、人事部がこれまで通り、募集をかけ、エントリーシートで応募、筆記・面接試験を課し、ふるいにかけて採用すればいい。つまり、待ちの採用でどれだけ応募させるかが勝負になります。
ところが、質を重視する採用になると話が違ってきます。待ちの採用では、その応募者の中に優秀な学生がいるかどうか未知数になってしまうのです。ですから、採用計画未達の企業が同じ採用方法に固執していると、ルールの改定で、採用期間が短くなるわけですから、さらに未達率が上がってしまいます。
成長している企業、とくに成長のスタートをきった企業に共通していることがあります。それは、安定志向の学生ではなく、リスクテイクできる学生を採用しているということです。そのために、採用担当者が積極的に学生に会っています。東大生を採用したければ本郷周辺に、京大生を採用したければ百万遍周辺に出向き、学生たちに会っているのです。
われわれは、この採用方法を「スカウト型採用」と呼んでいます。
優秀な学生を採用するためには、スカウト型採用が欠かせません。ただし、スカウト型採用は、飛び込み営業や紹介営業のごとく、会社側から個別積極的に学生にアプローチするため、泥臭いし、手間がかかりますがそれだけの価値があります。企業の知名度や規模に関係なく、リスクテイクできる優秀な学生を採用できるのです。実際、新卒採用コンサルティングをしたある中小企業では、京都大学生をはじめ優秀な学生を採用計画数以上に採ることができました。
スカウト型採用はいままでとは逆の思考で、そのプロセスを設計します。つまり、優秀な学生を採用するというゴールから逆算して採用プロセスを設計していくのです。ここには会社の都合などありません。
スカウト型採用は、学生に会うことが最初のアプローチですが、次に必要なことが、その学生のポテンシャルを見極めることです。採用担当者に会うと、「学生のポテンシャルを見抜くのは難しい」という声をよく聞きます。それは当然といえば当然です。新卒採用のポテンシャル評価が難しいのは、まだ学生のため中途採用とは違ってビジネスにおける顕在的な成果や実績を見ることができないからです。
では、潜在ポテンシャルを見る方法はないのでしょうか? あります。それは、その学生の「習慣」を聞くことです。習慣には再現性があるからです。例えば、「なぜそれが原因だと思ったのか」と聞くことで、原因をとらえる能力を図ることができます。具体的にいうと、問題に対して対症療法をする人なのか、それとも、根本療法ができる人なのかが分かります。
その場その場で対症療法しかできない人は、残念ながら将来伸びません。原因を突き止めて解決する能力がなければ、同じ問題に繰り返し遭遇することになるからです。例えば、天井から雨漏りがするとします。対症療法しかできない人は、雨が降るたびに皿や洗面器を床に置きます。しかし、天井の雨漏りをどうするかで問題解決能力が分かる根本療法ができる人は、当然ですが、雨漏りの原因を突き止めて解決を図ります。屋根の穴を塞げばいいのか、リフォームするレベルなのか、といったことを探ろうとするでしょう。
どちらが優秀かは言うまでもありません。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授