同じプログラムを受講しても圧倒的に変わる人とそうではない人がいる。その違いはいったい何であろうか。
今まで全5回、プレイングマネジャーの新たな行動について述べてきた。今回は最終号として、新たな行動に対して「変わる人」と「変わらない人」の違いについて述べていきたい。
以前、ある会社でリーダーシップログラムを半年間実施し、そのプログラムの事前と事後に職場の周りのメンバーから360度評価を取ったことがあった。
30問の具体的な行動に対して、受講者ひとりを職場の周りのメンバー約10人に5点満点で回答してもらうものである。その結果、事前と事後のスコアがあまり変わらない人もいれば、5点満点で1点以上スコアがあがり別人のように変化したという周囲からの評価を得た人もいた。
同じプログラムを受講しても、圧倒的に変わる人とそうではない人。その違いはいったい何であろうか。
周囲から別人のように変わったと評価され、周りにさらに影響力を発揮できるようになった一人であるAさん。いったい何がきっかけだったのか。
一連のプロセスを振り返ってみると、当初Aさんは職場で周りに良い影響力を発揮していると思いこんでいた。しかし、周りからの評価は間逆の結果であったという事実に、本人が相当ショックを受けたことがきっかけだった。
心理学者レオン・フェスティンガーが唱えた認知的不協和という理論がある。人が自身のなかで矛盾する認知を同時に抱えた不協和(ギャップ)を感じると、その不協和を減らすか除去するために、行動や態度に変化を起こすと言われている。例えば、喫煙者が「タバコは体に良くないという深刻な情報」を目にする。するとその不協和を埋めるために、「禁煙をする」という行動を起こすか、「タバコを吸っても長寿な人はいる」と言い聞かせるということだ。その上で、「変わる」という結果を導くためには、「禁煙する」方向に本人が一歩踏み出すことが大事なのである。
前述のAさんは、その不協和を感じた時に、相当ショックを受け顔色も変わっていた。しかしその後、その事実を周りの人などに話しながら受け入れていき、徐々に育成プログラム実施期間中に行動が変わり始めた。そして、育成プログラム終了である半年後には、人に対してオープンな雰囲気で積極的にかかわるようになり、周囲からの評価も圧倒的に変わった。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授