デジタルを経営層に意識してもらうこと、良いバトンを次世代に渡すことがCIOの役目「等身大のCIO」ガートナー重富俊二の企業訪問記(2/2 ページ)

» 2015年01月14日 08時00分 公開
[聞き手:重富俊二(ガートナー ジャパン)、文:山下竜大,ITmedia]
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対極の石油と自動車は重要な経験

――組織は、1つの考えに固執すると硬直化してしまう。自分自身は反組織というわけではないが、組織は常に柔軟に保たなければならないのではないか。

 石油や鉄は、国家が保護する象徴のような業界である。その対極にある自動車業界も長年見てきた。ものの本質をつかむことと、本質に沿って会社を動かしていくことは自動車業界にとっては当たり前のことである。こうした両極の業界を経験したことは、非常に重要な経験だった。いまだに自動車会社の幹部との交流もある。

JXグループのIT基盤を安全に統合

――今後、IT分野で重要視していることについて聞きたい。

JXホールディングスの内田氏(右)、ガートナーの重富氏(左)

 業務の主要な部分に関しては、すでに手を打ってあるが、細かい部分でまだ統合できていない部分が残っている。残りの部分に関して早い時期に完全に統合して、コストを下げていかなければならない。

 特に、JXグループの3つの柱であるエネルギー事業、石油・天然ガス開発事業、金属事業は、国内外の多様な地域で事業を展開しており、これらをいかに安全なIT基盤で統合するかが重要になる。

 「To-Be(あるべき姿)」を追求しながら「As-Is(いまある姿)」を固める仕事をしていきたい。長期的な視野で、気分を楽に進めていきたい。会社を良くして、後輩に良いバトンを渡すという気持ちでマネジメントをしないと会社の価値は向上しない。

――多くの会社、多くの事業ドメイン、多国籍な状況であり、広い視野でなければ本質が見えない。システムも広い視野で、時間をかけて作り込むことが必要だと思うが。

 まずは夢をきちんと描くことが必要だ。それと経営層の意識にITを組み込まなければならないと思っている。この2つを心がけながら、現状の課題をつぶしていくことが必要になる。

――経営層の意識にITを組み込みたいと思った理由は。

 ITに関して、多くの専門家に話を聞き、自分なりに絵を描いた。その結果、ITに必要なのは全体最適であり、これがJXグループの根幹になる。こうした絵が、これまでまったく描かれてこなかった。

 この話を社長が理解してくれたので、結果を出そうと努力している。一方、社長は理解してくれたが、ほかの役員が理解しているかどうかは未知数である。そこで誤解も生まれることがある。これを乗り越えていかなければ、会社が求める結果には達しない。

 ITが本業の会社ではないが、国内外で存在感のある会社であり、経営層もITを理解していることが望ましい。デジタルでビジネスをドライブするところまで行かなくても、デジタルを活用する必要性を経営層に認識してほしいと思っている。

対談を終えて

 世の中にはその人独自の“雰囲気”を持った人がいる。内田氏もそのような人の一人である。このインタビューでも、終始にこやかな表情をされていたが、このような人が本気で怒ったら恐いだろうなと想像させる「何か」をお持ちだ。

その「何か」とは何か? と私はインタビュー中も考えていた。対談を終えて、それは常にビジネスの最前線に立ってきたプライドであり、そこで培われた自分の眼を大切にする価値判断の「軸」の強さではないだろうかとの思いに至った。そんな「信念の人」との対談であった。

プロフィール

重富 俊二 (Shunji Shigetomi)

ガートナー ジャパン エグゼクティブ プログラム バイス プレジデント エグゼクティブ パートナー

2011年 12月ガートナー ジャパン入社。CIO、IT責任者向けメンバーシップ事業「エグゼクティブ プログラム(EXP)」の統括責任者を務める。EXPでは、CIOがより効果的に情報システム部門を統率し、戦略的にITを活用するための情報提供、アドバイスやCIO同士での交流の場を提供している。

ガートナー ジャパン入社以前は、1978年 藤沢薬品工業入社。同社にて、経理部、経営企画部等を経て、2003年にIT企画部長。2005年アステラス製薬発足時にはシステム統合を統括し、情報システム本部・企画部長。2007年 組織改変により社長直轄組織であるコーポレートIT部長に就任した。

早稲田大学工学修士(経営工学)卒業


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