表向きと実際が違う。中で働く人たちのベクトルがバラバラで仕事が前に進まないということがないだろうか。8つの基準に照らし合わせてみよう。
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仕事はなかなか思い通りには進まない。どんな素晴らしい案でも、誰かが必ず文句を言う。案そのものへの文句なら許容できるが、その理由が、「いつもの事前説明が無かったのでつむじを曲げている」などと聞くと、わが社の民度はなんて低いのだろうかと嘆きたくもなる。
行動規範に基づいて「挑戦」をしたにも関わらず、何もしない人のほうが高い評価を得るのであれば、「それは話が違う」と言いたくもなる。一度も新規事業に取り組んだこともない管理部門の役員に、事業提案をボロクソにけなされると「じゃあ、おまえがやってみろよ」といった悪態をつきたくもなる。
こんな風に、組織で「真面目に働く人」はストレスにまみれる。そして、その怒りの矛先は通常、上位者に向かう。上がアホやから仕事ができない、となるのだ。しかしながら、自分が上位者になったら、下のものが生き生きと働ける職場ができるか? というと、実際にはそうならないことが多い。下は下で、上がアホやからといい。上は上で下がアホだという。はからずも、そういう構図になってしまうのである。
このような場合、特定の誰かが悪いというのではなく、組織そのものが病気にかかっていると考えたほうがよいのである。そして、この病気をもたらしている真犯人は、たいてい「会社の基準に関する認識ギャップ」である。
組織には、「ビジョンや戦略、統制システム、習慣、業績評価基準、人事考課基準、行動規範、価値観、理念と存在意義、といった人の行動や思考をガイドする8つの基準が、存在している。(表参照)
これらのひとつ一つの内容の把握や重要度の認識が、人や部署によって大きく異なることが多い。本来、同じ会社で働く者であれば、階層の違いやセクションの違いを乗り越えて、ほぼ同様の基準を共有していなければならない。同じ基準を共有しているから組織的行動が成り立つのだ。ところが残念なことに、部門や階層や世代の違い、伝達役の管理者の能力差などによって、個々人のレベルでは、まったく違う基準になってしまっている。それでは、話が合わないのも当然だ。
さらに大きな問題は、これらの8つの基準が、一連のシステムとなって相互に整合性をもって連関していなければならないにもかかわらず、バラバラな状態になっていることである。
例えば、「社員の協働を促進しなければ成功しない?戦略?に、個人の最適化を誘導する?人事考課基準?が同居している」(「全社一丸となって〜」と社長が言う割に、評価制度は個人の成果しか見ていない)、「チャレンジを奨励する?行動規範?を掲げながら、新しい試みを許容しない?統制システム?になっている」(新しいことをしようとすると、管理系の部署から「待った」が入る)などである。
これらの組織は表向きに言っていることと、やっていることが違うというだけでなく、中で働く人たちのベクトルがバラバラで、個々の持ち場でいくら頑張っても、その努力をお互いが打ち消し合い、成果が生まれにくい状況になっている。したがって、何をやっても、あらゆるところで障害にぶつかり、仕事が前に進んでいかないのである。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授