実は変化や多様性に強い日本人――自分と違う考えを認める勇気を持つITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

「決められた解答」以外を認めない日本の教育。みんなと同じであることを重視する教育のために個性が出せなくなっている。グローバル化やダイバーシティが進む中で、自分と違う考えを受け入れ、個性を発揮するためにはどうすればよいのだろうか。

» 2015年12月21日 08時00分 公開
[山下竜大ITmedia]

 「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、井ノ上美和氏(Miwaさん)が登場。「"違う"ということ――認める勇気、捨てる勇気」というテーマで、幼少時代に感じた学校での違和感や海外で暮らしたときの日本と世界の意識の違い、これまでに接してきた多くの人とのコミュニケーションから学んだ「考え方が違って当たり前」であるという経験談を紹介した。

学校が大嫌いだった幼少時代

Miwaさん

 「小さいころから日本の学校が大嫌いだった」と話すMiwaさん。なぜ嫌いだったのか? 例えば、ピーマンともパプリカともとれる絵があって、「この野菜の名前を答えなさい」という問題があったとする。正解は「ピーマン」で「パプリカ」と答えると不正解になる。ピーマンとパプリカを単純な絵だけで判断するのは難しい。しかし、解答例は「ピーマン」なので、「パプリカ」は認められない。これは最近ネットで話題になっていた話だが、日本の教育を象徴している。

 Miwaさんは、「私が先生ならパプリカもマルにする。本来であれば、ありきたりではない発想力のある子どもの個性を伸ばしてやるのが教育ではないか思っている。小さいころから同じような悔しい思いを数多くしてきたので、日本の学校が嫌いになった。そこで将来、日本を脱出するためには語学が必要だと思い、小学校の時からラジオの英会話講座を利用して、お金のかからない英語の勉強をしていた」と当時を振り返る。

 「英語の勉強でも、同様の経験がある」とMiwaさんは言う。「中学校の授業で驚いたのは、先生が"This is a pen."とまじめに教えていることだ。日常生活でわざわざ"これはペンです"と言うシーンがあるだろうか? 見れば(ペンだと)分かる。英語を母国語にする人たちが、日常生活では絶対に使わない構文を、絶対に伝わらないカタカナ発音で覚えさせられるのである。この時点で、頭の中がパニックになった(笑)」(Miwaさん)

 そこで高校生のときに、メキシコに留学することを決める。Miwaさんは、「学校は、いったい何を学ぶところなのかということが自分の中で消化しきれなくなったのがその理由」と話す。メキシコはたまたま縁があって行ったのだが、スペイン語圏だったのでスペイン語が自然と身に付き、さらに勉強しようとスペインに移った。グローバル社会で仕事をしていくためには英語と日本語以外にも、もう1カ国語は必須だとも考えていた。

スペインから再びメキシコへ

 スペインで入学した語学学校は名門校で、クラスが初級から上級まで1〜5のレベルに分かれていた。レベル1〜2には日本の某外語大学のスペイン語学科の3〜4年生が多くいたが、入学時のレベル分け試験で、私はいきなりレベル4のクラスに入った。なぜスペイン語を学んで半年も経たない私がレベル4なのかを先生に聞くと、日本の大学生は文法能力は高いがディスカッションつまり発言ができないためレベルは1〜2止まり。私はディスカッションができるのでレベル4ということだった。

 「ディスカッションでは、宿題として与えられたテーマに対し意見を述べるのだが、当時はインターネットもない時代なので色々と調べることが困難で、自分の持つ知識と自分の考えで発言するしかなかった。こうなると日本の大学生は固まってしまう。日本語のディスカッションでも固まるのが日本人。ディスカッションでは、少ない知識の中でも、自分がどう考えているか、自分なりの意見をしっかりと発言できることが重要になる」(Miwaさん)。

 語学学校での授業は充実していたが、スペインで滞在していたのは地中海沿岸の地方都市だったため、アジア人に対する人種差別がひどかった。気候も食べ物もよかったが、長く住むには向かない。一方、メキシコは親日国で、アカプルコには伊達政宗が派遣した支倉常長の銅像が建っているなど、日墨間は徳川家康の時代から400年以上も深い交流がある。日本を尊敬し、温かく迎えてくれるメキシコに戻ることにした。

 メキシコに戻り、日本企業の現地法人に現地採用で入社したが、日本から来た駐在員と現地採用の社員の差に愕然とする。メキシコに来る社員は、スペイン語が話せるわけではなく、ちょっと英語が話せる程度の若手エリート社員だった。午前中は現地の語学学校に通い、住居も準備されお手伝いさんも付く。言葉ができないので、たいした仕事もできないのに、色々な手当がつき、お給料は現地雇用社員の数倍だった。

 「憤慨したが、そういうシステムなのでどうしようもないと、現地法人の社長に言われた。現地雇用で働いていくことの限界を感じ、日本に戻ったが、日本での学歴は高卒までだったので、社会人入学で大学へ行くことにした。」(Miwaさん)

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