先ず組織が行うべきは、プロセスをつくること。既存事業とは異なる意志決定基準に則って、今までにない決断をするためである。プロセス運用のポイントとは?
組織の中からイノベーションを起こすためには、イノベーターやイノベーション・マネジャーを組織側が支援する必要があります。組織側とは、主に経営企画部や人事部、R&D系の企画組織、事業部門などのセクションのことを指します。どんなサポートがあると、イノベーションが育まれ、企業がイノベーティブになるのか考えていきましょう。
先ず行うべきは、プロセスをつくることです。プロセスとは、イノベーション自体を検討する場のことを示します。既存事業の制約を受けない機会です。その中で行われる意志決定や評価制度、稟議や根回しなどもプロセスに含まれます。イノベーションを評価する組織自体もプロセスといっていいでしょう。既存事業とは異なる意志決定基準に則って、今までにない決断をする。これが、組織側が実施すべきことです。既存事業から離れた場所をつくらないといけないのです。では、プロセス運用のポイントを幾つか挙げてみます。
イノベーションは成功が約束されていないが故に、組織の中で傍流でありお荷物扱いされます。イノベーション・プロセスもまた同じようにあまり脚光があたらないことが多いのです。本業、本流のほうが分かりやすくて成果も大きいので、仕方ないのかもしれません。ただ、期待は必要です。組織側は「このイノベーションには大いに期待している」とはっきり表明することが大切です。イノベーターに対する継続した期待が、イノベーション・プロセスを運用する前提条件といえます。
イノベーション領域を刷り合せることは重要です。既存事業と比べて顧客・市場が新しいのか、提供価値や技術が新しいのか、それとも飛び地のように双方の新しさを求めるのか?期待領域を明確にしないと、不幸がおきます。経営者の「この提案は君たちの日常の仕事ですね。新しさはありません」という発言は、イノベーション領域が刷り合っていないときによく聞かれます。
更に大切なのは、評価基準です。何があると次のステップに進めるのかをはっきりさせる必要があります。プランの何を評価するのか?ニーズの具体性なのか、予測される市場規模なのか、実現の可能性か、それとも自社の技術やノウハウ・商圏などの活用度合いなのか?何がイノベーションを前に進める判断基準なのかが明確であることが求められます。イノベーションは不確実なものだからこそ、評価基準もはっきり明示できないことが多いですが、大まかなボーダーラインは共有しておくべきです。
イノベーションを磨くために、組織側はイノベーターに対して顧客に触れることに対する自由度を与えることが必要です。想定顧客に対して仮説をぶつけ、プロトタイピングやテスト・マーケティングをして、イノベーション実現のリアリティをつかむのです。マネジャーがそれを担保し、支援することも求められます。
同時に自社内の組織にも触れられるようにしないといけません。研究開発組織について考えてみましょう。技術の要である中央研究所に自社の社員が立ち入ることを制限している企業はあると思います。自社の組織を自社のイノベーションのために活用したり参照したりすることができないのは愚の骨頂であり、全くもってナンセンスです。研究所のみならず、他部門の社員、顧客基盤、工場や研究機材等の設備などに積極的に触れられるように支援するのが組織側の役割です。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授