宇宙開発というと国や政府が中心にやっていることだという認識があるが、民間による「商業の宇宙開発」は、この10年あまりで一気に加速している。
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「宇宙開発」というと、日本では今でも「国や政府が中心にやっていることだ」という認識をする人が少なくないようです。しかし民間による「商業の宇宙開発」は、この10年あまりで一気に加速しています。
例えば、電気自動車のテスラで有名なイーロン・マスクが、ロケットを宇宙に打ち上げている会社も経営していることは、日本ではまだ知らない人も多くいます。
そのイーロン・マスクの会社「スペースX」は、すでに50回以上ロケットを打ち上げているだけでなく、NASAに代わって国際宇宙ステーションへのアメリカの補給便サービスまで引き受けています。そう、スペースXが手掛けているのは、これまでNASAが打ち上げてきた「大型ロケットの事業化」です。
世界最大のオンラインショッピングサイト「アマゾン・ドット・コム」の創業者、ジェフ・ベゾスもまた、ロケットを開発する会社「ブルーオリジン」を設立しています。
ブルーオリジンでは、将来的に宇宙に100万人の経済圏ができることを想定し、有人宇宙飛行を見据えて安価で安全なロケットが必要になると考え、宇宙旅行ができるサブオービタル(準軌道)機や大型ロケットの開発に取り組んでいるのです。すでに試験機による宇宙空間までの飛行実験に何度も成功しています。
しかも、驚くべきことに「ブルーオリジンには年間1000億円の投資を行う」とジェフ・ベゾスは発表しています。これは、日本の宇宙開発予算の実に3分の1もの規模になります。
他にも、グーグル、Facebook、マイクロソフトといったベンチャーの巨人、さらにはシリコンバレーの企業やベンチャーキャピタルも、宇宙ビジネスに熱い視線を送っています。実際、シリコンバレーでは数多くの宇宙ベンチャーが生まれています。
IT関連の技術や資金が次々に流れているのは、宇宙を「インターネットの延長」として見ているからです。宇宙にネットワークを張り巡らせることで、「地球のビッグデータ」が手に入る。これが、さまざまなビジネスを生み出してくれるのです。
例えば、極めて高性能になっている小型衛星の撮影機能を使えば、連続的に周回して地球を捉えることで、一刻一刻その変化を見ることが可能です。
あるショッピングモールの駐車場に停まっている車の数を、時系列で分析することができる。植えられた作物の生育状況を宇宙から把握することができる。牧畜では、牧羊犬に代わって牛を管理することができる。魚群探知機の精度を高めることができる……。
こうした情報は、商品相場にも影響を与え、投資銀行やヘッジファンドなどの金融機関にとっても望まれるものです。大気のビッグデータを集めて天気予報の精度を飛躍的に高めたり、衛星写真を用いてゴルフ場やイベント場所など局所的な天気予報も可能になったりすると、どうなるでしょうか。
通信衛星によってネットワークを作ることができれば、今はまだインターネットがつながらないエリアもカバーできるようになります。地図情報と組み合わせることで、車の自動運転に結び付けることができる。バスの運行状況が適切なのか、どの時間帯が混むのかが分かれば、時刻表づくりも変わっていくでしょう。eコマースが地球の隅々までいきわたれば、大きな経済発展がもたらされるはずです。
宇宙はもはや、特別な場所ではなくなっているのです。ビジネスチャンスを拡大する場所なのです。
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明治学院大学 経済学部准教授