1990年代初めのこと。アルバイトに明け暮れていたとある大学生が「ITはこれからのビジネスに不可欠」とSIerに新卒で入社。ところが数年後、自分には全く縁がないと思っていた鉄道業界に入り、システム刷新から通信事業の立ち上げまで、さまざまな変革を巻き起こすことになる――。
「鉄道」と「AI」。一見相いれなさそうな2つのテーマをつなぐベンチャー企業が2018年5月に誕生した。その名は「感性AI」。電気通信大学の坂本真樹教授と京王電鉄が共同で立ち上げ、「感性とテクノロジーをAIでつなげる」コンセプトの下、オノマトペ(擬音語・擬態語など)を活用し、企業の製品開発やマーケティングをサポートするという。
この鉄道会社としては珍しい取り組みを指揮するのは、代表取締役社長 CEOの虻川勝彦さんだ。20年以上京王グループに在籍し、京王電鉄や京王百貨店、京王バスなど、グループ傘下でさまざまなシステムの構築やセキュリティの強化、そして新事業の立ち上げを経験してきた。
「鉄道というと『昔ながらのビジネス』と思われがち。沿線のお客さまに喜んでもらえるよう、ITで新しい挑戦を続けている京王を知ってもらいたい」とほほ笑む。
現在は、京王電鉄のIT管理部長も兼務している虻川さん。しかし、学生時代には、自分が京王電鉄にいるとは全く想像していなかったそうだ。
大学時代にホテルのバーテンダーとして働く経験をした虻川さんは、来店する企業の経営者と会話するうちに起業に興味を持つようになった。当時、商用化が始まったばかりのインターネットに衝撃を受け、「業務プロセスや顧客とのやりとりなど、将来個人で起業するならITは必須になる」と確信したことで、ITのスキルを身に付けようと独立系のSIerに入社した。
企業の業務プロセス構築など、大規模なプロジェクトにエンジニアとして参加し、ハードに働く日々が続いたが、4年目を迎えたときに転機が訪れる。コンペティションに負けた理由を探るうちに「テクノロジーを活用する優れた提案が必ず採用されるわけではなく、企業の意思決定の仕組みや人間関係の作り方も重要」だと気付いたという。
起業の前にそうしたスキルを身に付けようと、歴史のある企業へ転職しようと考えていた際、偶然手に取ったのが京王電鉄のパンフレットだった。「鉄道企業がIT人材なんて募集してるんだと驚いた」という虻川さんだが、自分がまさに探していた“レガシー”なビジネスに引かれ、京王電鉄に入社した。
情報システム部で働き始めた虻川さんを待っていたのは、オフコンで構成された社内システムと、「人事システム」「経理システム」など、業務システムごとに分断されたネットワークだった。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授