自分らしく生きている人は、自分らしさになんかこだわらない。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
「“いいね”はたくさん集まるのですが、ビジネス的に成り立たないのです」と悩む経営者が多くいます。
お客さまは、個性にお金を払います。個性があるということは、人と違うということです。人と違うことには、「いいね」は集まりません。自分と同じ感覚だから、「いいね」が集まるのです。
経営的には、「いいね」が集まらないことが、成功するのです。「いいね!」が集まらないと、自信がくじけて、個性が消えていきます。これは「個性」の定義が違うのです。
みんなが「いいね!」と言ってくれることは、すでに世の中にあることです。個性は、みんなは持っていなくて、1人が持っていることです。当然、みんなには理解されません。みんなに「いいね!」と言われることは、個性的ではないのです。
「いいね!」をたくさん集めようとする発想自体、個性的でなくなります。「いいね!」をたくさん増やそうと思ったら、どこかに書かれたグチ・悪口・ウワサ話をコピペすればいいのです。
ただし、それは自分の個性ではありません。「いいね!」を増やすために個性を消す方向に進むのです。
世界を見ると、爆発的に「いいね!」を集めているものもあります。それは、そもそも「いいね!」を集めようとはしていません。たまたまSNSにアップしただけで、人に見せるために考えたものではないし、ましてやコピペではないのです。
個性も欲しいし「いいね!」も欲しいというのは、欲張った考え方です。「いいね!」が欲しければ、個性を捨てればいいのです。それだけのことです。みんなと同じことをすれば、みんなに理解されて、「いいね!」が集まるのです。
長年売れなかったお笑い芸人さんが、ある時、突然売れるようになることがあります。売れるように芸を変えたのではありません。長年、続けた者の勝ちなのです。最初は「気持ち悪い」と言われていました。それを10年続けていたら、世の中で1人、2人と、「面白いよね」と言う人が出てきて、そこから売れるようになっていったのです。
ネット社会は、一見、多様性社会のように感じます。「いいね!」ボタンがついた瞬間に、没個性になっていきます。本人の中では、「いいね!」が少ないことで悩んでいます。個性を身につけたいなら、まずは「いいね!」を集めることを放棄した方がいいのです。
「自分らしさを生かしたビジネスがしたいんです」と、経営者が言いました。「あなたの“自分らしさ”はなんですか」と聞かれても、答えられません。「自分らしさ」は、自分では分からないことです。
「これが私の自分らしさです」というものは、本当の自分らしさではないのです。自分らしさは、その人が無意識にしていることの中にあります。反復回数が一番多くて、飽きるほどしていることです。
例えば、地域の町おこしで「うちは○○をウリにしようと思います」と言いますが、それは東京でもさんざん見ています。しかも、一周遅れです。
青森では、トラックの荷台を改造して、そこにお客さまが乗ってリンゴ狩りができるところがあります。「これ面白いじゃないですか」と言うと、地元の人は「恥ずかしいですから写真を撮らないでください」と言うのです。
自分らしさは、本人が飽き飽きしていることです。自分としては、むしろ恥ずかしくて見せたくないことなのです。
ブログで自分らしさを売り出そうとする人は、「いいね!」がたくさんもらえないとか、アクセス数が少ないとかでまた悩みます。ブログで「今日、こんなお店に行きました」というのをアップしても、それは自分らしさではありません。それは、たまたまミシュランの星のついたレストラン行ったからです。いつも行っているところは、写真すら撮りません。むしろ、恥ずかしいから内緒にしたいのです。
それが自分らしさです。
自分らしくあるのは、難しくもあり、同時に簡単でもあります。難しいのは、自分では気付きにくいからです。簡単なのは、ただ繰り返せばいいからです。
自分らしさは、性格のように生まれ持ったものではありません。ましてや必死に探しまわるものでもありません。一番たくさん回数を重ねていることが、自分らしさです。飽きるまでして、飽きても続けていることなのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授