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» 2019年05月09日 07時07分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:日本の失われた30年で、最も失われているのは「ビジョン」だ (1/2)

世界や時代の状況に対応するだけで手いっぱい。そんな悪い意味でのリアクション芸人のような企業、組織になっていないか。リーダーなら、そう問うところから始めてほしい。

[江上隆夫,ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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この本は、リーダーのための本でもあります。世界を率いていく覚悟を持つ若者でも、夢を抱きつつ困難な選択に挑む若きスタートアップでも、現場で悩みつつ組織を率いるシニアでもいい。自らの未来、多くの人の未来を良きものにしたいという意志を抱いているのなら、その人はリーダーです。まだ会ったこともない多くのリーダーに向けて、この本を書きました。

『THE VISION あの企業が世界で急成長を遂げる理由』

 これは「THE VISION あの企業が世界で急成長を遂げる理由」の“はじめに”に書いた文章です。ある意味、本書は、ビジネス書ではありません。もちろん、ビジネス書的な解説、役立つスキルや方法論をしっかりと紹介しています。そういう意味では、何の変哲もないビジネス書です。

 ただ、よく読めば、一人の日本人が危機感と切迫した意識で書いた“アジテーション”に近いものだということが分かるでしょう。著作の紹介にしては、おかしな展開で戸惑うかもしれませんが(笑)、ほんの数分ですので、いましばらくお付きください。

 「未来を予測する」という言葉があります。そして、たくさんの未来予測の本が出ています。ただ、事件や事象のたぐいの未来予測は、ほとんどが外れます。それは占いのようなものだからです。

 しかし、ほぼ唯一、確実に予測できるものが一つだけあります。それが人口予測です。

 ある程度の幅(上位、中位、下位での推計値)はあっても、いつごろどれくらいまで減少するかはおおよそ分かっています。皆さんご存じのように日本の人口は先進国の先頭を切って減少しています。ちょうど、たったいま、この瞬間も人口減少の真っただ中です。

 2010年から2030年の約10年間に日本の人口は893万人ほど減少します。地方の8〜9万人の中堅都市が100都市近く消える計算です。52都道府県ですから、乱暴に言えば、1つの県から大きな街が2つほどこつぜんと消えることになります。東京などの大都市近郊に住んでいると、満員電車や街の人混みに、そんな実感はまったくありません。しかし、田舎に行くほど、それは、まさに目の前の現実であり、体感としてひしひしと迫ってきます。

※内閣府Webサイト 平成29年版高齢社会白書(全体版) 1高齢化の現状と将来像より

 私が幼少期を過ごした長崎県五島列島の町は、1980年代までは西日本最大の巻き網漁業の基地で、12統200隻くらいの船団がいる、大変に活気のある町でした。しかし1980年代後半くらいから、原油高に始まり、中国・台湾・韓国などとの漁場での競争、船員の高齢化、漁業資源の枯渇など複数の原因もあってか、急速に寂れていきました。

 1960年代は人口一万人が暮らし、小中学校で一学年約100人、小中合わせて900人近い生徒数を誇っていた学校は、数年前、生徒数合計が10人前後までに落ち込み、廃校に追い込まれてしまいました。

 すり鉢状のだんだん畑に囲まれた町で、喧噪と汽笛がこだまするようだったのに、いま墓参りで町を訪れると、静けさに胸を突かれます。子どもの声がまったくしないのです。町で出会う人を見ていると、中心年齢は70代ではないかと思います。

 商店が消え、会社が消え、学校が消え、写真館が消え、映画館が消え、漁業組合が消え、病院が消え、ボーリング場が消えました。コミュニティーはぎりぎり残っています。人口減とは、人が居ることで命脈を保っていた多くのものが消えることを意味します。私は、ひょっとしたら、日本の未来を少しだけ先取りして体験しているのではないか。そんな思いが故郷を訪れるたびに、強くなります。

 日本人にとって、人口減少は、ある意味170年ぶりの“黒船”です。

 この黒船は、私たちは100年後のために、また子供たちのために、どのような未来をつくるのかと、待ったなしの問いを投げかけています。

 ここで、あなたに質問をします。

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