ホットケーキがブルーオーシャン? 令和で成功するヒントがそこにある

シンプルで家庭でも焼けるホットケーキはビジネス的には採算が合わず、大半のお店のメニューから消えつつあるが、その一方でホットケーキにこだわり続け、磨きをかけ、今や世界を魅了している繁盛店もある。そこにはビジネスのヒントがあるはずだ。

» 2019年07月29日 07時07分 公開
[浅井英二ITmedia]
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ローランド・ベルガー 遠藤功会長

 多くの人が「より良い時代に」と期待を寄せた令和への改元から早くも3カ月が過ぎた。改めて平成とはどんな時代だったのか、そして令和はどんな時代になるのか、ビジネスの視点、さらにいえば競争戦略の視点で考えてみよう。

 「平成は、ビジネスの原点であるオリジナリティーを見失ってしまった時代だった」と振り返るのは、「現場力」の第一人者として知られるローランド・ベルガーの遠藤功会長だ。

 現場をつぶさに観察することで知られる遠藤氏は、戦略策定だけでなく、実行支援を伴った「結果の出る」コンサルティングで高い評価を得ている。「現場力を鍛える」「見える化」「現場論」といった経営書のほか、「新幹線お掃除の天使たち」のようなユニークな視点のベストセラーも多い。

「ホットケーキの神さまたち」に学ぶビジネスで成功する10のヒント

 そんな遠藤氏が近著で取り上げたのが、「ホットケーキ」。小学生のころ、父につれられ、神田須田町の名店、万惣フルーツパーラーで初めてホットケーキに出会う。1956年生まれの遠藤氏にとってホットケーキは「昭和」の象徴でもある。7年前、突然の万惣閉店をきっかけにおいしいホットケーキを探し求め、食べ歩くようになったという。

 「昭和の偉大な食べ物が平成という時代を生き延び、今や世界を魅了している。そこにこそビジネスのヒントがある」と遠藤氏。

 著書「ホットケーキの神様たちに学ぶ」(東洋経済新報社)で「聖地」として紹介している板橋・大山のピノキオには、連日、海外からの観光客が押し掛け、そのおいしさはもちろんのこと、ふっくらと厚みのある造形美に世界が驚き、魅了されているという。

 小麦粉をベースとしたシンプルなホットケーキは、どちらかといえば、ありふれたもの。ホットケーキミックスを使えば、家庭でも簡単に作ることができるので、あまり高い値段はつけられない。そのくせ、注文が入るたびに焼いて提供するので手間暇がかかる。経営的に見れば、採算が合わず、生クリームやフルーツをたっぷり盛ったパンケーキのほうがビジネスとして魅力的に見える。

 しかし、ビジネスでは、新しいもの、イノベーティブなものでないと成功しないと思われているが、本当にそれだけだろうか。遠藤氏が食べ歩くホットケーキの繁盛店は、ありふれたものでも、工夫さえすれば十分に商売になることを証明している。

 「世の中にないものを発明しなければ……というのは平成の発想。GAFAのようなプラットフォーマーにならなければ生き残れないと考え、多くの日本企業がイノベーションに振り回され、自分らしさを失ってしまった。ビジネスの原点はオリジナリティー。令和は、顧客の目線で身近な、一見ありふれたものも見直してみる、既存の商品にこだわり、磨きをかけてみる、まさに戦略的思考が求められる時代になるでしょう。もちろんフルーツたっぷりのパンケーキを追い求めるのもいい。ホットケーキをあえて大きなブームとはせず、レッドオーシャンにしないのも戦略的な考え方だ」(遠藤氏)。

 オリジナリティーこそがビジネスの「基本のキ」であるはずなのに、平成は個性を失った。「チェーンストア」の時代でもあったと遠藤氏は指摘する。確かに、どの駅を降りても、どの商店街を歩いても同じブランドの小売店や飲食店ばかり。低価格で一定の品質が得られるのはいいが、どこか味気ない。

 遠藤氏は「チェーンストアでは、機能的な豊かさは得られたものの情緒的な豊かさは満たされなかった。ホットケーキが証明しているように、令和ではそんなニーズを満たす多様性や選択肢にビジネスで成功するヒントがある」と話す。

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