そして2つ目に、部下の意見を否定しないことです。部下に意見を聞いておいて「そんなのダメだよ」と否定してしまう人がいます。本人は悪気なく言った言葉でも、否定された側は深く傷つきます。一度否定されて傷ついた経験をした人は、次から自分の意見を言うことに対して恐怖心を抱くようになってしまいます。部下がすっとんきょうなことを言ったとしても、まずは受け止めるよう心掛けましょう。その上で「他にもアイデアを出してみて」と再度ボールを投げるのです。
上司と部下の話に限ったことではなく、「言った言わない」トラブルはどこにでもあります。自分は伝えたと思っていても、相手には伝わっていないことは少なくありません。多くの人が勘違いしている点ですが、「伝えた」と「伝わった」は違います。特に最近は、メールやチャットなどでやりとりが記録に残るからこそ、「メールを送った」=「内容が伝わった」と早合点してしまう人がいます。
しかし、正しく内容が伝わったかどうかはメールを送っただけでは分かりません。見落としてしまっていることもあります。この時、自分はもう送ったから、見落としている方が悪いと言いたくなってしまう気持ちも分かりますが、コミュニケーションの食い違いにおける責任は、常に発信側にあります。発信した側が、正しく伝わったかどうか確認しなければならないのです。上司と部下の関係でも同じです。
ということは反対に、自分が受け取る側になった際には、必ず「確認しました」と伝えることが必須です。
さて、物事を正しく伝えるポイントは次の3つです。
(1)抽象的な言葉を使わないようにする
(2)見える化する
(3)確認する
部下に対して指示をするときに、「取りあえず◯◯の企画書、いい感じに仕上げておいて〜。なる早でよろしく!」と曖昧な指示を出す人を見かけることがあります。「いい感じ」も「なる早」も人によって捉え方が異なります。このような指示の出し方では、意図通りのものができるはずもありません。「8月1日の10時までに、◯◯の内容を盛り込んだ企画書を5ページにまとめて私の机の上に置いておいてください」このように指示を出せば、誰が聞いてもどのように対応すればいいかすぐに分かります。
また、口頭で説明するだけではなく、図やグラフなどにして見える化することで、こちらの意図が伝わりやすくなることもあります。先ほどの例で言えば、「いい感じ」のイメージを図や過去の企画書などで見せることができれば、漠然としたものが明確になります。
最後に正しく伝わったかどうかを確認しなければなりません。相手が部下の場合、一番有効な方法は復唱させることです。正しく伝わっていなければ、正しく復唱することができません。また、「ここまでに質問はありませんか?」と確認を取りながら進めることで、疑問を残さずに話を進めることができます。
今、時代は音を立てて変わり、上司と部下の関係も以前と大きく変わってきています。「上司だから言うことを聞く」というこれまでの当たり前が通用しなくなっています。部下が自ら、自発的に行動するように促すことを管理者はこれまで以上に求められています。そこでキーワードとなるのが2つのポイント「承認」と「感謝」です。
組織の中にいても、やはり人は感情の生き物です。認められるとうれしいしもっと頑張ろうと思えます。「ありがとう」と言われると感謝を伝えてくれた人に好感を抱きます。
部下というのは身近にいるが故に、油断をするとついありがたみを忘れてしまいそうになります。してもらって当たり前の感覚を捨て、感謝の心を持って接するよう心掛けましょう。せっかくの機会です。今日はいつもより大きな声で「ありがとう」と部下に伝えてみませんか?
小学校教員を経て、一般企業の営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。
04年株式会社新規開拓を設立。現在までに延べ17万人の社員研修・人材教育に携わる。
女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、TSL「トップセールスレディ育成塾」を主宰。卒業生は2500人を超える。
著書は全39冊、累計売上部数は約48万部。主な著書に、『コミュニケーションの教科書』(フォレスト出版)、『すごい仕事力』(致知出版社)ほか多数。最新著は『仕事も人生もうまくいっている女性の考え方』(あさ出版)。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授