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» 2019年11月12日 07時04分 公開

既知とアイデアの組み合わせで市場を変えろ:「Iの世界」の成長戦略 イノベーションを起こし、市場を変える (2/2)

[永井俊輔,ITmedia]
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 ここで挙げたテクノロジーは、すでにさまざまな分野で既存の商品・サービスと組み合わさり、イノベーションを生み出しています。クレストのエサシーが看板とカメラの組み合わせであることはすでに説明しましたが、スマートキーは鍵とICチップの組み合わせですし、ポケモンGOはスマホゲームとARの組み合わせです。

 組み合わせの例は無限に考えられますし、今後も新たなテクノロジーが世の中に登場します。実現性や予算、収益性などはいったん脇に置き、斬新さや面白さに注目しながら、柔軟な発想で未来を想像してみてください。

新たなビジネスモデルとの組み合わせ

 次に、新しいビジネスモデルとの組み合わせによってイノベーションを起こす方法を考えてみましょう。

 手持ちの商品の売り方を変えたらどうなるか、収入源を変えたらどうなるかといったことを想像しながら、以下のビジネスモデルとの組み合わせを考えてみてください。

1、フリーペーパー型(収入源を変える。例:雑誌を読者に売るのではなく、広告料で稼ぐ)

2、三越型(広告手段を変える。例:広告コストを使って、自社ロゴ入りのアイテムなどを作り、無料で配る)

3、福袋型(後払いが常識の業界で前払いを導入。例:福袋、食べ放題など)

4、ファストファッション型(中抜きで収益性を高める。自社でメーカー機能を持ち、D2C(Direct to Customer)の流通ルートを構築)

5、ネットショップ型(固定費(店舗の家賃や人件費)を削減。ECサイトの流通を強化)

6、プラットフォーム型(商品や情報を提供する「場」を作り、探せる、出会える、見つかる、買える、分かるといった機能を提供)

7、ネットフリックス型(作り方、売り方、遊び方、使い方、稼ぎ方などに関する既存のルールを変え、ユーザーフレンドリーにする。例:動画をネット配信して、レンタルビデオ業界の「借りたら返す」ルールをなくす)

8、カーシェア型(手持ちの商材や資産をシェア可能にして収益を得る。例:カーシェアリング、民泊、レンタルキッチンなど)

9、相乗り型(同じ目的を持つユーザーに相乗りを通じてコストメリットを提供する。例:ライドシェア、倉庫のシェア、トラックなど定期便のシェアなど)

10、共同購入型(同じ商品を買うユーザーたちに大量購入を条件とするコストメリットを提供する。例:大口向け割引、広告の共同制作など)

11、1000円カット型(価格破壊のインパクトを与えるイノベーション)

12、サブスクリプション型(定額制の使い放題にすることで、使用量に応じてコストがかさむ不安を軽減。例:食べ放題、聞き放題、生花のデリバリーなど)

 ビジネスモデルのイノベーションも、前述したテクノロジーとの組み合わせ例も、さまざまな組み合わせが考えられますし、複数のアイデアが浮かび、どれが最良なのか悩むこともあるかもしれません。そのような場合は、ユーザーが最も喜ぶ方法がどれなのか考えてみると良いでしょう。なぜなら、どの時代においても、どんな社会においても、「便利」「お得」「手間が省けた」などと喜ばれたものが、社会で受け入れられ、定着するからです。

 その点をまとめたのが以下の表です。イノベーションがユーザーに与える価値は、大きく5つに分けられます。頭に思い浮かんでいるイノベーションのタネが、5項目のうちどれか1つでも満たしていれば、市場に受け入れられる可能性があります。ユーザー目線に立ってアイデアを精査してみましょう。

イノベーションがユーザーに提供する価値

1、コスト削減、無料利用

ユーザーのコスト負担を大きく削減する。既存価格の10分の1に下げたり、有料だったものを無料化したりするといったインパクトが重要。

2、心理的欲求を満たす、心理的負担の解消

新たな体験を提供して社会的欲求や承認欲求を満たせたと感じてもらう。または、自動化やカスタマイズによって「煩わしい」「面倒くさい」といった感覚を軽減する。

3、情報獲得

ユーザーに有益な先行情報、解析結果情報、希少情報などを提供する。ユーザーがその情報を活用し、価値(お金、時間、手間の軽減など)を得られることが重要。

4、意思決定、労働コスト削減

意思決定、業務、リサーチ、労働、などにかかる負担やコストを削減または解消する。

5、収益獲得

使用していない資産やリソースを有効活用したり、有効活用できる方法を提示したりすることによって所有者にお金などの新たなリターンを生み出す。

 さて、新しい組み合わせを思い付き、ユーザーが喜んでくれる未来が想像できたら、実現に向けて動き出しましょう。

 次回は、LMIの実行方法について紹介します。

著者プロフィール:永井 俊輔(ながい しゅんすけ)

クレストホールディングス 代表取締役社長。1986年群馬県生まれ。早稲田大学卒。株式会社ジャフコでM&Aやバイアウトに携わった後父親が経営する株式会社クレストに入社。CRM(顧客関係管理)やマーケティングオートメーションを活用して4年間で売り上げを2倍に拡大し、クレストをサイン&ディスプレイ業界の大手企業に成長させる。2016年に代表取締役社長に就任。ショーウィンドウやディスプレイをWeb同様に正しく効果検証するリアル店舗解析ツール「エサシー」を開発するなど、リアル店舗とデータサイエンスの融合を目指す。成熟産業にITやテクノロジーを組み合わせ、新たな価値を生み出すLMI(レガシーマーケット・イノベーション)に尽力。


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