第1回:相談できない新人にはこう向き合え新人が勝手に育つ「10秒会話と質問」(2/2 ページ)

» 2020年02月26日 07時11分 公開
[島村公俊ITmedia]
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「助けて」「教えて」と言うことがチームへの貢献になると理解させる

 指導者の共通の悩みに、「新人から困っていることや、分からないことをスムーズに打ち明けてもらえない」という点があります。ギリギリになってから、あるいは取り返しのつかない状況になってからでないと、新人がSOSを出せないケースが意外とあるのです。

 新人は、困っていることや分からないことを放置しておくと、この先どんな悪影響につながるのかイメージできないので、つい先延ばしにしてしまいます。

 「こんなつまらない質問をしたらきっと怒られるだろう」

 「こんなことを言ったら、きっと、できないやつだと思われるに違いない」

 「他の新人と比べられて、ダメなやつというレッテルを貼られてしまう」

 など、いろいろなことを想像して、相談や質問を躊躇(ちゅうちょ)してしまうのです。この状態を放置していては「自ら育つ」体質に改善できません。当然、時短育成とは程遠くなってしまいます。

 そうならないようにするには、指導者が新人に「助けを求めることは、恥ずかしいことではないよ。みんなで成果を出すために必要なこと。躊躇するのはおかしいよ」とはっきり伝えることか゛大切です。

 指導者は、新人に「質問や相談を通じて仕事を前に進めることは、チームへの貢献になる」という思考を持たせましょう。「進め方が分からない」「業務がうまく理解できない」というSOSが発信できないタイプは、どちらかというと人の目を気にしたり、失敗を極度に恐れたりする慎重派に多く見受けられます。また、プライドが高く、大きな失敗をしてこなかったタイプも、質問や相談ができず、一人で悩みを抱えてしまったりします。

 こういうタイプは、「もう少し自分で調べたら、誰かに聞かなくても済むのではないか」「周囲からできないやつだと思われたくない、なんとか自分で完結したい」と考え、問題を先延ばしにしてしまうのです。もちろん分からないことを自分で調べることも大事です。しかし、誰かに聞けばすぐ分かることを時間かけて調べている人は、時間コストという視点に欠けていると言わざるを得ません。

 こんなときいつも私がとるスタンスは、「同じことを何度も言わせるのも怒るけれど、分からないことを放置して時間を無駄にしたらもっと怒るからね」というものです。常日頃から「困っていることを言わないで放置するのが最もダメ。すぐに報告、相談してほしい」というメッセージを伝えるようにしています。

 なお、新人か゛自分からどんどん質問をするのはいいことなのですが、かといって、全く自分で調べようとせず、すぐ人に頼る姿勢もほめられたものではありません。自分の考えを持って、相談や質問をることも合わせて教えましょう。

 新人には、「相談や質問をするのはいいけれど、少なくともノーアイデアで来るものじゃない。『私の考えはこう思うのですけれど、どうでしょうか』というように、自分でも考えてから来てください」と指導すべきです。

匠の時短質問

分からないことを放置している新人に対して伝えるとき

「疑問点を放置すると、チームに迷惑が掛かるのはなぜかな?」


著者プロフィール:島村公俊

人事系コンサルティング会社を経験後、2006年ソフトバンク(旧ボーダフォン)入社。

ソフトバンクユニバーシティの立ち上げ参画し、研修の内製化をリードする。

日本HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞、ソフトバンクアワードの受賞をはじめ、アジア初で米国教育機関よりPike’s Peak Awardを受賞。その他、千人規模の新人研修やエルダー(OJT、メンター)教育にも携わり、新人、若手の早期育成にも貢献する。

2015年に講師ビジョン株式会社創業。社内講師の育成トレーニング、OJTトレーナー研修、新人研修などを提供する。近著に『10秒で新人を伸ばす質問術』(東洋経済新報社)がある。


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