(A)会社業務に専念せよと叱責
(B)会社業務に支障がない程度にと公私の区別を説く
(C)もっとやれ! と激励
これも(A)と(B)は想定内で、(C)が想定外です。
このときにも、規格外の答えがありました。『ロビンソン・クルーソーを探して』を書いたときに、この話をすると上司が「もっとやれ」と励ましてくれました。テレビ局から番組化したいという連絡があり、約1億円分のスポンサーを見つけて番組を買い取ることになりました。副業の本が会社から評価され、さらにビジネスにつながるという経験でした。
こうした規格外のところに「最高のおもしろさ」があると感じています。
「探検」と「冒険」の違いを知っていますか。探検と冒険は、ほぼ同義語と思っている人が多いのではないでしょうか。言葉も漢字も違います。私自身は探検家であり、冒険家ではありません。もっといえば、探検と冒険は対義語です。探検は「探して検証すること」であり、冒険は「危険を冒す」ことです。だから会社で探検はしても、冒険をしてはいけません。
多くの人は、日常的に探検をしています。探検家は、英語で「Explorer」といいますが、知りたいことがあるときに、Internet Explorerを利用して検索していると思います。Internet Explorerにより、検索ワードに関連する情報の一覧が表示され、その一覧から気になる情報をクリックする操作を繰り返すことで、最終的に必要な情報を見つけ出すことができます。
探検とは、まさに知的好奇心に基づいて、自分の知りたいことを発見することです。
Explorerという言葉は、欧米と日本でも違いがあります。欧米では、探検は非常によいイメージがあります。コロンブスが新大陸を発見して、社会に富と幸福をもたらすというようなよいイメージです。日本で探検と聞くと、危ないものというイメージがありますが、欧米的な発想で探検を考えることができれば、社員や会社のチャレンジ精神を下支えすることができるのではないでしょうか。
探検家が目指す発見は、常識からはみ出したところにあります。非常識だったり、妄想だったりします。さらにいえば、未知です。ここまでいけば、探検家としては最高の領域です。
例えば浦島太郎は昔話ですが、奈良時代の丹後国風土記、日本書紀、万葉集には、浦嶋子という人が出てきます。日本書紀には、478年に浦嶋子が蓬莱(竜宮城)に行ったという記述があります。浦島太郎はファンタジーだといってしまえばそこで終わりですが、これは何かあるのではないかと考えてみる価値があります。そこで行動してみます。
丹後国は、今の京都府の日本海側、若狭湾に丹後半島があります。現在、そこには浦嶋神社があり、神社には、玉手箱も残っています。玉手箱の中には、女性の化粧道具が入っていました。化粧には呪術的な意味もあり、化粧で老人になることもできます。そこにも奥深さなどを感じ、さらに調べてみると1957年に京都府丹後市から浜詰遺跡からウミガメ類が出土したという記録を見つけました。
非常識や妄想、未知にのめりこんでいくと、ただの昔話が現実に近づき、ウミガメの研究者にまでつながり、さらにおもしろくなっていきます。この経験から、物語を探検するという探検テーマを確立しました。物語は、フィクションとノンフィクションの間にあり、ある事実から生まれているのではないかと感じています。
ロビンソン・クルーソーのモデルの家を探しましたが、これもフィクションの中のノンフィクションです。これを調べることで、新たな発見があるのではないかと取り組みました。いま風にいえば、リアルの世界と仮想現実を行き来しています。これを、自分に当てはめてみてください。
自分は常識の中にいて、外側に他人ごとがあり、さらにその先に別世界があります。他人ごとや別世界は、自分の常識の外にあるからおもしろいのです。常識の外にあることを見ているだけでは、何も起こりません。非常識に1歩踏み出してみることが大切です。おもしろいものをどうしたら自分のものにできるのでしょうか。
1つの妄想に対し、3倍行動しないとブレイクスルーは起きません。非常識や未知の世界が常識の世界とつながりません。浦島太郎は、物語という他人ごとでしたがそこに妄想や行動をかけ合わせることで、浦島太郎が自分ごとになります。
2010年に、江戸時代に伊豆鳥島で12年間生き延びた野村長平という人の足跡を尋ねました。古地図をもとに、洞窟を発見し、これにより、野村長平という人の足跡が、自分ごとになりました。2018年に、剱岳の山頂に平安時代の仏具がおかれているのですが、実際に剣岳に行って古道を踏査しました。行動を起こすことで謎の扉に手をかけることができるのです。
自分とは関係ないことも、1歩踏み出してみると、新たな協力者も現れ、新しい世界が広がります。おもしろい人生とは、新しい物語を始めることす。今後も未知や非常識に向かって歩いていきたいと思っています。皆さんも1歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授