ネタバレ厳禁! 映画レビューの書き方からビジネスコミュニケーションのヒントを学ぶITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

文章で自分の思いを伝えることは、なかなか難しい。短い言葉で効率よく伝えるためにはいくつかのポイントがある。映画のレビューの書き方を通じて、ビジネスにも役立つ文章の書き方を学ぶ。

» 2021年03月23日 07時03分 公開
[山下竜大ITmedia]
映画ライター 松村知恵美氏

 ITmedia エグゼクティブ勉強会に、映画ライターの松村知恵美氏が登場。「映画ライターに学ぶ 人を魅了する映画評など文章の書き方」というテーマに基づいて、映画レビューの書き方を講演。事前に参加者から提出された『ボヘミアン・ラプソディ』『万引き家族』『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の3本の映画のレビューの添削を交え、自分の思いを、短い言葉で効率よく伝えるための文章の書き方を紹介した。

 現在、松村氏は、フリーランスのライターとして、映画やエンターテインメント分野を中心に執筆活動を展開している。

 「映画のレビューや、監督・出演者・スタッフなどのインタビューなど、作品の魅力や作り手の思いを分かりやすく読者に伝えられるように心掛けています」(松村氏)

映画レビューではまずどんな映画だったかを説明する

 映画の内容を伝えるには、まずどういった映画だったかを説明する必要がある。映画のストーリーを端的に表す表現を「ログライン」と呼ぶ。ログラインは、映画の主人公は誰で、主人公が何のために、何をするのか、どのようなテーマなのかを説明している。

 例えば、『万引き家族』『ボヘミアン・ラプソディ』『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のログラインは、以下の通り。

  • 『万引き家族』:万引きなどの軽犯罪を生活の糧にしている5人の家族が、ネグレクトされた少女 ゆりを拾って一緒に暮らし始める話。家族の生活を追ううちに、だんだんと家族の秘密が明らかになっていく。
  • 『ボヘミアン・ラプソディ』:フレディ・マーキュリーが仲間たちとクイーンというバンドを結成し活動していく話。クイーンがだんだんメジャーになりビッグになっていく様子と、メンバーの心境の変遷が描かれている。
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』:炭治郎と仲間たち、炎柱の煉獄杏寿郎が多くの人間が消えたという無限列車に乗り込み鬼と戦う話。鬼に家族を殺された炭治郎が鬼になった妹を人間に戻すため鬼と戦う大ヒットコミック「鬼滅の刃」のシリーズの劇場版第1作。

 「『鬼滅の刃』全体のログラインは「鬼に家族を殺された少年・炭治郎が、鬼になってしまった妹を人間に戻すため、鬼と戦う話」となります。鬼滅の刃の原作を読んでいる人には、全体のログラインは不要ですが、作品自体を知らない人に『鬼滅の刃』の内容を説明する場合には、シリーズ全体のログラインにも触れた方が親切です。シリーズもののレビューを書く場合には、映画やそのシリーズについて、何も知らない人でも分かるような簡単な説明を入れるようにしましょう」(松村氏)

自分だから気付いた映画の魅力を表現する

 映画は、ログラインだけでは表現できない。次に伝えるべきは、「あなただから気付いたその映画の魅力」である。映画には、それぞれに独自の魅力がある。それは俳優の演技や監督の演出、映像、音楽など、さまざまだ。見る人の個人的な経験や知識などによっても、魅力を感じるポイントは異なってくる。

 映画の魅力を知るには、配給会社が訴求したいと考えている映画のウリや魅力が凝縮されている予告編を見るのが分かりやすい。最近では、YouTubeなどで簡単に予告編を見ることができるので、レビューを書くときには予告編を見直すとよい。映画の本編を見る前と、見た後では、予告編の感想が違っていることもある。

 「予告編でピックアップされるのは、“誰にでも分かりやすい”作品の魅力です。それ以外にも、“自分だからこそ気付いた”魅力があるはずです。その魅力は、映画本編を見て、あなたの心の中に残ったポイントをピックアップしましょう。自分自身の経験や感覚に基づいて、心に残る映画の魅力を探してみてください」(松村氏)。

 映画を理解したり、評価したりするためには、映画の周辺情報を知っておくことも重要。例えば、監督や俳優の情報、映画賞の受賞情報、作品の時代背景、興行収入、映画製作時のトリビアなどを取り込むことで、単なる感想ではないレビューになる。

 『万引き家族』のトリビアとしては、監督のインスピレーションの源が実際の事件にあったこと、是枝監督の受賞歴、独自の演出法、「家族」を描く是枝監督のフィルモグラフィーなど。また、『ボヘミアン・ラプソディ』のトリビアは、ブライアン・メイやロジャー・テイラーが音楽総指揮を担当、第91回アカデミー賞にて主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞などがある。

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