ネガティブなイメージの“終活”を「早く始めたくなる!」方法――PRECIOUS DAYS 代表 下村志保美氏ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

終活の目的は、家族の負担を軽くする準備であり、自分の最期を迎えるための準備である。しかし、どうしてもネガティブなイメージが付きまとう。終活を早く始めたくなる方法を、片づけのプロに学ぶ。

» 2021年12月07日 07時00分 公開
[山下竜大ITmedia]

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、日本ライフオーガナイザー協会 認定講師で、PRECIOUS DAYS 代表である下村志保美氏が登場。著書『片づけのプロが教える心地いい暮らしの整え方(三笠書房)』や、1000件以上の個人宅/オフィスの整理収納サポート、各種片づけセミナー/講座、企業内研修などの経験をしかし、「片付けのプロが教える 捨てるから始めない終活講座」をテーマに講演した。

日本ライフオーガナイザー協会 認定講師、PRECIOUS DAYS 代表 下村志保美氏

終活は家族の負担を軽くして自分の最期を迎える準備

 「趣味に没頭したい」「適度に働きながら自由に生きたい」「晴耕雨読」「死ぬまで健康」「孫と遊ぶ」「月1回くらいゴルフや旅行」「社会貢献」など、どのような老後を過ごしたいかは人それぞれ。終活のイメージも、「老後の資金は大丈夫なのか」「遺言書やエンディングノートを書いた方がいいのか」「相続税はどうなるのか」「認知症や介護は大丈夫か」「片づけはどうするか」などさまざまである。

 「いずれにせよ、終活と聞くとネガティブに捉える傾向にあります。“やりたい!”というよりは、“やらなきゃ”というイメージです。なぜ終活が必要なのか。目的は、家族の負担を軽くする準備であり、自分らしい最期を迎えるための準備です。それでは、“終活を早く始めたくなる!”ためにはどうすればいいのでしょうか。終活とは、不安、不便、不満の3つの“不”を取り除く取り組みだと思っています」(下村氏)

 例えば、お金の不安は日本FP協会のWebサイトから無料でダウンロードできるフォーマットを利用して、ライフプラン表やキャッシュフロー表などを作ってみる。運転できなくなる、目が見えなくなった、耳が聞こえなくなった、家にモノがあふれて片づけられないなどの不便は、元気なうちから備えておく。仕事ができなくなる、思うように体が動かない、孤独などの不満は、諦める、執着を手放す勇気が必要になる。

 「お金の不安は、分かれば取り除けます。老後に車がないと不便な場合は運転できなくなったときの手段を考えておきます。老眼鏡や補聴器などは、本当に不自由になってからでは脳が対応できないこともあるので早めに備えておきます。家の片づけも、身体が動かなくなる前に始めます。不安は知ることで“安心”に、不便は備えることで“便利”に、不満は手放すと決めることで“満足”に変わります。終活とは、全てを捨てることではなく、自分らしい最期を迎えるために必要なものを選択する作業です」(下村氏)。

重要なものと取りあえず置いておくものは“混ぜるなキケン!”

 終活はもちろん、片づけをするときには、捨てるものを選ぶのではなく、まずは何を残すかを考える。人間は、捨てるものを選ぼうとすると、捨てない理由を考えてしまう。「値段が高かった」「まだ使える」「子供が使うかもしれない」「2度と買えない」などである。しかし、残すものを選ぼうとすると不思議と捨てる理由も見つかる。

 「残すものを選ぶ基準が、安心、便利、満足です。例えば、あこがれて買ったおしゃれだが重たい鍋は、年を取って体力がなくなると、安心でも、便利でもなく危険です。本が好きな人は本を積み上げがちですが、崩れたときに危険です。踏み台が必要なほど高いところにモノを収納することも転落の危険があります。こうした基準で残すものを選びます。このとき、重要なものと取りあえず置いておくものは“混ぜるなキケン!”です」(下村氏)。

 終活は、必ず捨てなくてもよいが、混ぜてはいけない。例えば、保険証券は重要だが、毎年送られる契約内容のお知らせは不要である。また、災害時に持ち出すものと持ち出さないものも分けておく。骨とう品や貴金属なども、持ち主以外には価値が分からないことから、相続後に買い取り業者に全て偽物と言われても判断できない。そこで、高価なものとそうでないものを分けておく必要がある。

 片づけの基本は、使っているか、使っていないかである。下村氏は、「お客さまの片づけを手伝っているときに、“これ使ってますか?”と聞くと、多くの人が“(いまは使っていないけど、いつか)使います”と答えます。“使っていない=捨てる”ということではなく、いま使っているかどうかです。使っているものには、安心、便利、満足が得られるものかというフィルターが重要になります」と話す。

 「毛玉だらけのスエットは、エグゼクティブにふさわしい家着でしょうか。老後にふさわしい服装か、持ち物かという目線を持つことが必要です。使っていないけど持っておきたいものは、使っているものとは分けて保管します。思い出の洋服は、クローゼットに入れません。箱などに詰めて、思い出として保管します。保管場所がない場合、いま使っていないものを片づけることで、思い出を保管する場所を確保できます」(下村氏)。

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