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» 2022年11月04日 07時09分 公開

経営が担う「人事トランスフォーメーション」の必要性昭和の人事から2030年に向けた人事へ(2/2 ページ)

[木名瀬克明ITmedia]
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 いまは新しい成長のために、そして特に大手企業では、成熟・衰退期における経営変革のための人事戦略が必要なときだ。

 人事部の多くがまだ画一的な人材の配置(新卒採用+基礎教育)と定型的な労務業務を行いながら、時々に出てくる流行語を取り入れるための、請負アウトソーシング部署のようになっていることは、HRトランスフォーメーションについて調査した日本総研の調査からも明らかになっている。

 日本総研が出しているHRトランスフォーメーションの意識調査を見てみると、日本企業の人事機能のトランスフォーメーションの意識が薄弱なことが分かる。

 ここで皮肉なのは、大企業において経営層がその必要性を認めている(30%)にもかかわらず、同じく大企業の人事部ではその必要性が認識されていない(10%)ことだ。

 また、たとえ人事部側でHRトランスフォーメーションをしたいという意思があったとしても、現実では、確立された枠組みの中で、画一的な人財の輩出と定型的な労務業務に追われ、企画業務に工数をさけていない状況である。

 日本総研のHRトランスフォーメーションに対する意識調査の第3章「今後の人事機能が担うべき役割」において、全ての設問項目において、「人事機能が手いっぱいで動く余地がない」の回答を行っている大手企業の人事管理職の割合は、29%を超えている。これは経営層が思っている数字(25~31%)よりも大きくなっている。

 変化の必要性を意識していても、優先順位は目先の業務となっている証左である。

HRトランスフォーメーションは経営も巻きこんだテーマ

 このような現状に至っている責任は、もちろん人事部自身にもある。だが、それ以上に「人事のことは人事部が」という意識を持ち続けてきた、社長以下経営陣にこそ、より大きな責任がありはしまいか。

 デジタル化やESGなど、経営環境やさまざまなステークホルダーへの要求に応え続けられる会社になるために、経営レベルも巻きこんで人と組織を考えることの重要性をあらためて認識し、現代に適した新しい人事の在り方を考える。人事・組織は経営戦略の一部であり、「人事任せ」からの脱却は必須だ。

 日本を代表する某電機メーカーでは、HRトランスフォーメーションの実現のために、あるべき人事部の役割を果たせる戦略的な人事のエキスパートと同時に、規模も相当大きいある事業部門のトップ自体を外部からスカウトした。その中で、事業部門経営と人事をどう連携させるかの壮大なPOCを進めている。

 その企業では、グループ本社、事業部門長(役員)、事業部門内人事(籍は本社人事部)という立て付けで、固有の社内事情などについてはもちろん古参の人事部スタッフがサポートする。

 また、旧来から人事部だけでなく、鍵となる事業部門上位管理職に対しても「これからの人事・組織がどう運営されるか」についての教育(!)を、実践を通して行っている。中でも人事チームに対しては、人財育成や要員計画(人数だけでなく、予算も)、その前提としての育成計画や中途採用などについての取り扱いも含め、新しいやり方に沿って詳細な社内研修マテリアルまで作り、研修と実務上の課題解決を並行させる形で進めている。

 社員に対しても、これから先に企業価値を上げるためにどのような価値観や行動スタイルが求められるか、個々の行動変容だけでなく、最終的に到達したい企業文化・風土としてもまとめられている。

 こうした取組の全ては、会社が実現したい将来のビジョンから計画された一連の事業戦略や計画実行のために必要な基盤としての人財という考え方から構成されている。

 一方で、労務管理や給与の支払いなど、比較的アドミニストレーションに近い業務は、徹底して社内外へのアウトソーシングを活用し、業務移管を行いながら全体のサービスレベルを維持・向上しながらコストについても維持または削減する活動を進めている。

 こうした変革の実現に不可欠だったことが2つある。

 1つは、現社長にも影響を持つために、社外取締役も含めて取り組みを行ったことだ。まさに伊藤レポートの中心でもある「ガバナンス」の必要性である。この企業では、当該事業部門における変革そのものが、真に重要な経営課題として取り上げられていた。

 そしてもう1つは、そのガバナンスの中で、改めて人事・組織に関する課題について、主体的に取り組むのは、事業・各機能部門トップであるという、「経営者の役割」の確認を行ったことだ。

HRトランスフォーメーション後の人事部の姿

 HRトランスフォーメーションが成功裏に終わったとき、人事部はどのような人財で構成されているのだろうか?

 適切な専門性を持った人事部は、全社で使えるフレームワークや、基本的な方針(ポリシー)を展開させるために、経営レベルで人事・組織に主体的に関わりながら、個別の部門については部門リーダーを適切にコーチングするという役割の変化が必要だと考える。

 人事部では、経営戦略実現のパートナーとして、当然ながら経営レベルの知識やスキルも必要となる。事業部長、社長とも経営戦略というレベルで議論する必要があるからだ。筆者のよく知るCHROは、会社の株価についてその上下の背景や、課題についてまるでCFOかのように、役員会議で議論に参加している。「人事が口を出すな」というムードも無い(そうした役員会にした、と笑って言っていた)。実力で示しつつ、もちろんトランスフォーメーション中に丁寧なコミュニケーションをしながらではあろうが。

日本企業の今後

 日本の昭和世代サラリーマンであれば、誰でも知っていて現在も企業規模の大きな会社は、何を価値の源泉としているのだろうか? その価値をより磨き、持続的に成長するために成すべき人事トピックは山積している。

 この宝の山を攻略し、今後の企業価値向上に貢献できる人と組織に、日本企業に、是非とも生まれ変わってほしいと思い、本原稿をまとめた。

著者プロフィール:木名瀬 克明

OXYGY株式会社 シニアマネージャー

大手会計系グローバルファームにて、金融ノンバンク業界の各種戦略策定から実行支援までさまざまなプロジェクトに従事後、戦略系ファームの立ち上げに参画。

経営管理領域を軸に、戦略・マーケティング・人事領域など、幅広い領域で顧客の経営戦略立案・推進の支援をリード。

上流戦略から施策実行まで、ハンズオンでクライアント企業の現場に入りながら、人・組織のエンパワーメントを円滑に推進するコンサルティングスタイルを得意としている。


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