――その後の化学メーカーでは、また違ったカルチャーショックがあったそうですね。
楠本氏: 劇的な変化を経験しましたね。入社直後に資本関係が変わり、シンガポールの子会社が親会社になったのです。「日本が本社としてガバナンスを効かせる」はずが、逆に「各国でコストをかけず、結果だけ早く出せ」というシンガポール流への転換を迫られました。
私はアプリケーションの担当でしたが、資本関係が変わったタイミングで開発はすべてストップ。無駄がないか業務整理するところから始まりました。
親会社は「なぜそんなに時間をかける? 自分たちで作ればすぐ終わるだろう」というスタンスで、グローバルな統合よりも、現地で最適化すればよいという考えでした。
それもまた経営判断としては正しいのだと思います。実際、この数年で、約1兆円程度だった売上高は、1兆6千億円を超える規模になっていますので。
――2024年に村田製作所に入社されてからは、どのような課題を感じましたか。
楠本氏: 非常に真面目で優秀な組織ですが、真面目すぎるがゆえに「木を見て森を見ず」になりがちな場面がありました。
例えばある時、ごく少数ユーザのPCのEPP(Endpoint Protection Platform)の除外設定を許可するかどうかという、非常に細かい議論に長い時間を費やしていたんです。私からすれば、「壁に掛かった絵画が数ミリ傾いているのを必死に直そうとしている」ような状況です。それも大事かもしれないけれど、「それより前に、絵画を掛ける部屋や建物自体に問題がないかなど、検討するべきものがたくさんあるのではないか」とアドバイスしました。
細かい設定にこだわることも大事ですが、会社全体やグローバル全体のリスクを俯瞰(鳥瞰)して、リソースを配分すべきです。大枠を決めれば、自ずと修正方針も決まるかもしれないし、そもそも不要だったとなるケースもあるでしょう。何より仕事の成果が大きく変わってくるはずです。まずはそうした視座の転換を求めました。
――鳥瞰で見たときに、どのような課題があったのでしょうか。
楠本氏: まずは「日本一極集中」からの脱却です。
これまでは、日本の本社がマレーシア、タイ、中国といった現地の工場や拠点と直接やり取りをしてコントロールしようとしていました。しかし、時差もあれば言葉の壁もある中で、全てを日本でマイクロマネジメントするのは物理的に不可能です。インシデントが起きても即応できません。
そこで「リージョン」という概念を導入し、権限を委譲しようとしています。日本が全てを抱え込むのではなく、各地域に責任を持つバーチャル組織を作り、そこで自律的に解決できるモデルへと再編を行っています。
また、増えすぎたセキュリティツールの「断捨離」と統合も進めています。あれもこれもとベストオブブリードでツールを導入した結果、運用コストが天文学的になり、使いこなすための人手も足りなくなっていました。これらをプラットフォーム化して統合し、ベースラインの運用を自動化することで、浮いたリソースをAIや新しく発生する領域に振り向けようとしています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授