地方にも「年収1000万円超」がある 地方上場企業で広がるエグゼクティブ転職の可能性今、エグゼクティブが「地方」で描くキャリア戦略(2/2 ページ)

» 2026年07月10日 08時00分 公開
[江口勝彦ITmedia]
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エグゼクティブの転職は「求人探し」ではなく「経営課題探し」

 エグゼクティブの転職は、求人内容を比較する一般的な転職活動とは性質が異なります。

 重要なのは、企業がどのような経営課題を抱えていて、その中で自身の経験・専門性がどう発揮できるのかを見極めることです。つまり、エグゼクティブの転職は「求人探し」ではなく「経営課題探し」に近いのです。

 しかし、エグゼクティブ個人が経営課題を把握するのは至難の業です。その理由は、企業の経営課題はインターネット上にはなく、ましてやオープンに語る人もいないからです。

 では、経営課題を知るにはどうすれば良いのでしょうか。一つの選択肢として、地域の情報に精通したエージェントやヘッドハンターに相談する方法があります。

 地場の企業とパイプがあるエージェントやヘッドハンターは、外からは見えない企業の状況や課題を理解したうえで、入社希望者の経験と企業側が期待する役割とをうまくすり合わせ、双方にとって納得感のあるマッチングを支援しやすい側面があります。

 すぐに転職の予定はなくとも、「いずれは地方へ」と考えているエグゼクティブならば、早めにエージェントやヘッドハンターとつながることをお勧めします。実際、私が見聞きしたエグゼクティブの転職成功事例では、数年単位の情報収集や相談を続けた結果、最適なタイミングで出会いが生まれて素晴らしいマッチングが実現しています。

 さらに、地方への転職では生活環境も変化します。特に家族を伴う移住や帰郷で、住環境や教育環境の詳細な情報がほしい場合は、地域の事情に詳しいエージェントに話を聞くと転職後に大きなギャップを感じずに済みます。

 エグゼクティブの転職は、家族の暮らしと自らのキャリア、そして企業への入社後に期待される役割も含め、納得感を持って意思決定できるかが重要です。だからこそ、エグゼクティブのキャリアをしっかりと理解し、企業との間をつなげるパートナーとしてのエージェント・ヘッドハンターの存在が、地方転職を成功に導く鍵になると思います。

エグゼクティブの地方転職は、仕事と人生の幅を広げる選択肢になる

 ここまで全3回を通じて、地方企業でエグゼクティブ人材へのニーズが高まっている背景や、実際に期待される役割を見てきました。

 かつての地方転職は、「エグゼクティブが活躍できる場が少ない」「年収やキャリアの面で選択肢になりづらい」と捉えられがちでした。しかし現在では、事業承継や上場対応、DX推進、グローバル展開といった経営課題の高度化を背景に、地方企業が高い専門性を持つ人材を積極的に迎え入れる動きが広がっています。

 実際に、30代・40代で年収1000万円を超えるポジションや、首都圏で培った経験を存分に発揮できる環境は、地方にも着実に増えています。

 一方で、エグゼクティブの地方転職は単なる仕事選びではありません。「どこで誰と暮らし、どんな人生を送りたいか」といった、根源的な問いと向き合う機会でもあります。

 実際に地方への転職を選んだエグゼクティブからは、仕事のやりがいが増しただけでなく、「家族との時間が増えて家庭内の笑顔が増えた、生活全体の満足度が高まった」という声も非常に多く聞かれます。

 もちろん、地方転職は誰にとっても正解というわけではありません。まずは自らの専門性の棚卸しをし、将来の選択肢として地方企業に目を向けるのも一つの方法だ、ということです。そのための情報収集や、長期的に相談できるパートナーを持つことは、これからの時代におけるキャリア形成の一つの考え方になるかもしれません。

 地方には、全国的な知名度は高くなくとも、独自の強みを持つ企業が数多く存在します。そういった企業には、エグゼクティブの持つ専門性や実践知が会社の未来に直結し、成果や変化をダイレクトに感じられる「手応えある仕事」がまだまだあります。

 地方には「まだ自分の知らない選択肢が眠っている」と考えたとき、エグゼクティブの仕事と人生の可能性はこれまで以上に広がっていくと思います。

著者プロフィール:株式会社エンリージョン 代表取締役 江口勝彦

1978年生まれ、千葉大学卒。

プロバスケットボール選手から、リクルートでのセカンドキャリアを経て、2010年に地方特化型の人材紹介会社エンリージョンを設立。UIターン転職に特化した全国最大級の人材紹介ネットワーク「リージョナルスタイル」に加盟し、新潟・群馬・長野・山梨・富山・石川・福井・滋賀の8県9拠点で事業を展開。

経営層・部長職以上に特化したエグゼクティブサーチを強みとし、地域企業の経営課題に対して「人材」という観点から意思決定を支援。経営者と向き合いながら、組織づくり・事業成長に直結する採用支援を行っている。

現在は経営者であると同時にキャリアコンサルタントとしても活動し、転職支援およびキャリアデザインサービスを提供。現場と経営の両視点から、これからの働き方と人材戦略のあり方を提言している。

著書に『30代から地元で暮らす 幸せのUターン転職』(幻冬舎)、『マンガでわかる 仕事と子育ての両立の壁にぶち当たった30代共働き夫婦が「キャリアデザイン」に本気で取り組んだら……』(ディスカヴァー21)がある。


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