「わが社では心の病を抱えている人が多い」という話を耳にすることが増えた。2008年度にうつ病などの心の病で269人が労災認定されたことが厚生労働省のまとめで分かった。これは過去最悪の数字である。このうち未遂を含む自殺の認定は66人で、前年度より15人減ったものの、過去2番目に多かった。
集計によると、精神疾患による労災申請は927人で、認定された269人を年代別に見ると、30代が28%、20代と40代がともに26%だった。自殺で認定された66人のうち、62名が男性で、年代別では50代が24人、40代が15人、30代が11人と続いた。さまざまな世代で心の病を抱えていることが分かる。
この数字は氷山の一角でしかないと考えている。「ハインリッヒの法則」をご存じだろうか。この法則は、米国の損害保険会社に勤務していたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏が労働災害の事例統計を分析した結果から導き出した法則であり、「1件の重大災害(死亡や重症)が発生した場合、その背景には29件の軽症事故とともに、300件のヒヤリ・ハット(危うく大惨事になるもの)がある」というものである。
この法則に従えば、自殺者や心の病を抱えている人が1人いる場合、自殺あるいは心の病を抱えている可能性の高い人が29人いて、精神を揺さぶられている予備軍が300人いるということになる。つまり厚生省が発表した300倍以上の人が何かしらの心の病を抱えていると考えられるのである。
なぜこのような心の病を抱える人が増えているのだろうか。不況の影響もあるが、負の連鎖が起きているのではないかと思う。
最近、ある銀行の50代半ばの副支店長が、30代の女性社員に対してセクハラをしたという話を聞いた。その原因を調べてみると、いろいろなことが浮き彫りになった。彼は銀行の合併によって副支店長になったのだが、彼の上司にあたる支店長は30代の若手だった。彼はその支店長から「使えない奴」というレッテルを貼られ、リストラに近い扱いを受けていたのだ。「あなたはこの会社にはいらない。教育係にでもなったらどうですか」というようなことを言われ、それがセクハラにつながってしまったという。
セクハラは決して許されることではない。しかし、上司の心ない発言(この場合、年下から言われたことがさらなる打撃を与えたかもしれない)が、彼を精神的に追い込み、大きな過ちをさせてしまったともいえよう。
負の連鎖は恐ろしい。1つの出来事をきっかけに、どんどん悪い方へ転がっていく。それがほかの人たちにも大きな影響を及ぼしていく。特にリーダーは自分の言動や行動が周囲に与える影響を考慮すべきである。
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