先進的課題をビジネスチャンスにしてグローバルに展開NTT DATA Innovation Conference 2012レポート(2/2 ページ)

» 2012年02月17日 08時00分 公開
[大西高弘(ノーバジェット),ITmedia]
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ITが高付加価値創造のエンジンとなる

 先進的課題を解決していくには、NTTデータのようなIT企業の存在が欠かせない。それは、世界で通用する高い付加価値を生み出すのにITが欠かせないからだ。

 「当社が世界に先んじて国内で高度なサービス提供を行い、海外に展開した事例として、防災、カード決済、地図・交通情報などがあげられます。このようにより高い付加価値を生み出す製品、サービスをITを利用して作り出し、それを日本で展開した後、海外で勝負していけば道は自ずと開けていくはず」と山下氏は力説する。

 NTTデータでは既に実績のある日本の得意分野を海外展開することを第1のアプローチ、センサー技術などの高度な先端技術を活用したサービスの開発を第2のアプローチ、そしてIT競争力の強化を第3のアプローチとして位置づけ、これらのアプローチを並行して取組んでいるという。

 「日本の得意分野の1つである防災分野では、日本政府が積極的に支援しているASEAN地域の防災ネットワーク“AHA centre”へのシステム面での協力がある。これは、われわれが日本での構築で実績があるEMIS(広域災害救急医療情報システム)で培った技術力がベースになっている。地図情報技術では現在インドネシアでの多層的地図情報管理システムの構築に取組んでいる。これは、社会インフラや地域開発計画など、さまざまな地図の情報を重ね合わせて活用するためのシステムである。また、ベトナムやタイでは日本でおなじみのカード決済のシステムの導入を進めている」(山下氏)

 さらに高度な先端技術活用では、センサー技術を利用したM2M(Machine to Machine)ソリューションへの取組みがあげられる。M2Mは機械と機械が互いに通信ネットワーク上で交信する仕組みだ。NTTデータは個別のセンサーネットワークを横断的につなぎ、多彩な情報活用のニーズにこたえるM2Mクラウドに取組んでいる。山下氏によるとセンサーは技術が進み、低コストでの調達が実現したが問題は電力だという。

 「センサーの電源を取るために大規模な電源設備を用意していては低コストでのソリューションは実現しない。電池は定期的な交換作業が必要。やはり、太陽光、水力、振動、排気熱といったところから電源を取れるシステムを考える方がいい。例えば、スイッチを押す力を利用してセンサーから電灯に通信して点灯させる仕組みがある。この仕組みでなら、壁の中にスイッチの電源ケーブルなどを敷設する必要もなくなり、コスト低減が実現する。こうしたソリューションを“エネルギーハーベスティング”とよんでおり、当社が中心となってコンソーシアムを設立した。この分野は今後市場が拡大すると期待されている」(山下氏)

低いシステム構築コストが生み出す競争力

 では、第3のアプローチ「IT競争力の強化」はどうか。山下氏は現在の日本のIT企業を取り巻く現状について、ハムサンド状態と表現する。

 「欧米のパッケージソフトと中国、インドなどの安い労働力の2つのパンに挟まれたハムみたいな状態。上下のパンの圧力はどんどん高まっている」

 NTTデータでは、3:4:3といわれるシステム構築の要件定義・設計、開発、試験検証の3つの行程のそれぞれの作業負荷割合を減らしていく試みを継続的に実施している。

 「要件定義・設計では設計情報などをデータベース化して負荷を減らし、効率化を図っている。開発においては、ソースコードの自動生成を進めており、ほぼ9割はすでに自動化が実現している。試験、検証についても効率化を進め、全体で飛躍的なコスト低減ができる見込みである。これだけのコストを低減させた上で、システムのライフサイクル管理も含めたサービスを提供している」(山下氏)

 また、システム開発のコスト低減を実現したことで、たとえパッケージ導入を基本としたシステム構築においても、ユーザー企業のコアコンピタンスにかかわる部分では、ユーザーとともに競争力を高める独自システムを構築し、パッケージでは実現できない付加価値創造を進めていくという。

 「低コストで自由度の高いシステムを構築すれば、お客様のビジネスの継続的な伸張が期待できるようになる。これからもさまざまなアプローチで技術力を高めていき、よりレベルの高い貢献をしていきたい」と語る山下氏。2012年、「One NTT DATA」というテーマを掲げ、海外のグループ企業もすべて「NTT DATA」の統一ブランドで事業を進めることになった同社は、国内、海外のリソースをシームレスに活用してサービス強化を図る。同社の付加価値戦略は最初からグローバルを意識したもの。厳しい環境を勝ち抜くための手法として大いに注目される。 

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