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» 2013年05月20日 17時00分 UPDATE

海外進出企業に学ぶこれからの戦い方:日本で培った力を生かす 外食産業のアジア市場進出における成功要因 (1/2)

「クールジャパン」が象徴するように、日本の文化が海外に広まりつつある。日本食も一つのブームとして、海外にビジネスを展開する日本の外食企業は増加しつつある。中でも近年ホットなのが、アジア市場である。

[井上浩二、小林知巳(シンスター),ITmedia]
  • 日本ではよく知られた和食チェーンレストラン。ある日、タイではこのレストランで、羽振りがよさそうな男性が豪華な花束を渡して女性にプロポーズしていた。さて、これはどの日本食チェーンだろうか?
  • あるカレー専門店は、上海で若い女性に支持されており、しかも高級感のあるデートスポットとして知られている。これは、どのカレーチェーンだろうか?

 上記は日本の外食チェーンの事例なのだが、読者の皆さんはそれぞれどの企業を思い浮かべるだろうか。

 前者は「大戸屋」、後者は「CoCo壱番屋」での出来事である。もちろん両社ともに日本でもよく知られた外食チェーンだが、日本の大戸屋でプロポーズする姿はまず見られないし、CoCo壱番屋でデートするカップルはいるかもしれないが、高級感あるデートスポットというイメージは持たれていないだろう。

 両社のアジア市場の店舗では、日本ではちょっと想像に難いような光景が見られる。なぜこのような成功を収めることができているのであろうか? 海外で成功している外食企業は、日本とは異なる形で展開しているのであろうか? 今回のコラムでは、アジア市場で成功しているいくつかの外食企業を取り上げ、その成功要因を考えてみたい。

 「クールジャパン」という言葉が象徴するように、日本の文化が海外に広まりつつある。その流れの中で、日本食も一つのブームとして欧米やアジア各国で広がり、グラフ1に見られるように海外にビジネスを展開する日本の外食企業は最近増加しつつある。中でも近年ホットなのが、アジア市場である。

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 日本の食に対するイメージや、アニメを筆頭にした日本文化の浸透度合い、さらには日本企業の進出状況など、国や地域によって違いはあるものの、多くの外食企業がアジア展開で成功を収め始めている。その成功要因は何だろうか? まずは、限られた事例ではあるが、味、メニュー構成、価格という外食産業の基本的な要素をもとに類型化して考えてみたい。

日本と「同じ」、王道で勝負

 先に紹介した大戸屋は、日本「風」ではなく「本物」の日本料理を提供することにこだわって、タイや台湾などで大きな成功を収めている。日本と同じ食材を原則とし、日本と同品質のものが確保できない食材や調理器は、コスト高になっても妥協せずに日本から直送しているとのことだ。結果的にタイではかなり高い価格設定になっているが、「大戸屋なら、本物の日本料理を食べられる」と富裕層を中心に口コミが広がり、高級日本食チェーンとしてのブランドを確立した(出所:日経レストランOnline 2012年5月7日)。タイで既に普及していた日本「風」の料理では差異化できないとの認識が、日本と同じ味と品質を貫いた要因のようだが、さらに「アジアでブランドを確立する」という経営者の強い意志も背景にあり、価格は高くても本格的な日本料理にこだわった展開方針をアジア市場で採っていったようだ。

 大戸屋とはだいぶ異なる外食企業に見えるが、カレー専門チェーンのCoCo壱番屋も、「王道で勝負」という観点では、同じ成功パターンに見える。読者の皆さんもご存じのように、カレーはインドを筆頭にした東南アジアの料理だが、日本では日本人の嗜好に合わせたカレーが発展してきた。CoCo壱番屋は、日本のカレーの単品メニューで、かつ日本と同じ価格で勝負した。好みのカレーの種類とトッピングの組み合わせによるバリエーションだけで十分通用すると判断したようである。中国では、まだカレーが市場に十分認知されていない段階でいち早く進出したことにより、「日本の"ココイチ"カレー」を中国市場におけるスタンダードとして浸透させることに成功したようだ。さらに、価格を日本と同等にしたことが高級感、そしてある種のファッションと認識され、中国市場では割高であるにも関わらず、日本とは異なるセグメントの外食店として人気を博している。

 大戸屋とCoCo壱番屋は、「日本と同じ」味、メニュー、価格を貫くことで、ステータスの高いブランドを確立した成功例だといえるだろう。

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