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» 2017年10月18日 07時00分 公開

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:シンギュラリティに向け勝ち残る企業とは――人生140年時代の今、中堅こそ起業を (1/2)

2045年に訪れると予測されている「シンギュラリティ」。人工知能が人類を超越する時代に生き残ることができるのはどのような企業、そして人なのだろうか。

[山下竜大,ITmedia]

 ITmedia エグゼクティブ勉強会に、エクスポネンシャル・ジャパン COO 齋藤和紀氏が登場。「シンギュラリティ・ビジネス――AI時代に勝ち残る企業と人の条件」をテーマに講演した。日系・外資系メーカーでファイナンス関連の要職を歴任した齋藤氏は、シンギュラリティ大学のエグゼクティブプログラムを卒業している。

 シンギュラリティ大学は、2008年に脳科学者で発明家、未来学者であるレイ・カーツワイルと、起業家で未来学者であるピーター・ディアマンディスの2人により創立された教育機関である。米国カリフォルニア州のエイムズNASAリサーチパーク内に本拠を置き、技術と人類に関する超未来志向のプログラムを展開している。

世界中のスーパーエグゼクティブが参加

エクスポネンシャル・ジャパン COO 齋藤和紀氏

 起業家の教育や研究が中心だが、アクセラレータやファンドの機能もあり、世界中のスーパーエグゼクティブが参加。メインプログラムは、6月〜8月の10週間で開催される「グローバルソリューションプログラム」である。人類規模の問題を解決する技術や考え方の講義、スプリント形式の製品サービス開発などに世界中から参加した約80人が取り組む。

 「招待の60人は、数百倍ともいわれるものすごく狭き門をくぐらなければならない。参加費用は、全てGoogleが負担する。残りの20人は、各国のコンテスト優勝者が参加し、その参加費用は、各国のスポンサー企業が負担する。日本ではソニーがスポンサーとなり、人工培養肉の研究者とテレプレゼンスロボットの研究者2人が参加した」(齋藤氏)

 その他にも、1週間程度のエグゼクティブプログラムやアクセラレータプログラム、大企業向けカスタマイズプログラムなどが展開されている。また、日本と世界をつなぐイノベーションハブとして、米国に次いで2カ国目で全体では50番目となる「東京チャプター」が設立された他、「シンギュラリティ大学ジャパンサミット」と呼ばれるセミナーも開催されている。

 ちなみにシンギュラリティ(技術的特異点)とは、コンピュータ技術や生命科学などの進化、発展によって、科学技術が自らより優れた科学技術を作れるようになるポイントを指す。このポイントを越えると進化は無限大に発散するという。2005年に発刊されたレイ・カーツワイルの著書である「シンギュラリティは近い」では、2045年にシンギュラリティが起きると予測されている。

エクスポネンシャル思考とは

 シンギュラリティ大学で教えていることは、「エクスポネンシャル(指数関数的)思考」や「メガトレンドテクノロジー」「未来予測、課題解決」である。エクスポネンシャル思考とは、科学技術の発展が指数関数的に向上することを意味する。

 エクスポネンシャルな科学技術の発展に、ヒトゲノムの解析プロジェクトがある。齋藤氏は、「1990年から始まった15年構想のプロジェクトで、7年経過した1997年の進ちょくは1%だった。多くの学者が、あと700年かかると言ったが、カーツワイルは期限内に完了すると予測した。その後、ゲノム解析はエクスポネンシャルに進化し、期限より大幅に速い2000年に完了した。カーツワイルは、科学技術の発展において、1%は半分に等しいと話している」と言う。

 エクスポネンシャルなカーブは、一般的なリニアで直線的な将来予測に比べて、初期の段階では下回っている。しかし、ある時点で破壊を迎え、その後は予測できないことが起きる。こうした状況をピーター・ディアマンディスは、破壊的進化に起きる“6つのD”として定義している。破壊的進化に起きる“6つのD”とは、次の通りである。

  • Digitalization(デジタル化)
  • Deception(潜行)
  • Disruption(破壊)
  • Demonetization(非収益化)
  • Dematerialization(非物質化)
  • Democratization(大衆化)
破壊的進化に起きる6つのD

 「デジタルカメラは、当初は“おもちゃでしかない”といわれ潜行していたが、破壊的進化を迎えた段階でフィルムが非収益化した。さらに、デジタルカメラはスマートフォンに取り込まれて非物質化し、誰もがインスタグラムに写真を掲載できるほど大衆化している。ピーター・ディアマンディスは、6つのDに対応できなければ、“Death(死)”しかないと話している」(齋藤氏)

 近年、スマートフォンに取り込まれたのは、デジタルカメラだけでなく、地図、電卓、カレンダーなど、さまざまな機能がある。齋藤氏は、「今のスマートフォンに搭載されている機能を、20年前に全て単品で購入すると1億円程度かかる計算になる。スマートフォンは、先進国だけでなく、今やアジア、アフリカ諸国にも広がっている。テクノロジーが世界をフラット化させ、アバンダンス(あり余るほど豊富)にした」と話す。

メガトレンド:カーツワイルのG・N・R

 メガトレンドテクノロジーには、「カーツワイルのG・N・R」があり、それはジェネティクス、ナノテクノロジー、ロボティクスである。齋藤氏は、「日本では、AIが注目されているが、AIは基本的な技術であり、G・N・Rが人間の進化に非常に大きなインパクトをもたらすことになる。しかも、G・N・Rが相乗効果を生みだし、それが同時多発的に発生する」と話す。

 宇宙、人工知能(AI)、エネルギー、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)、3Dプリンタ、IoT、エデュケーション、ロボティクス、ブロックチェーン、ドローン、ニューロテック、シェアリングエコノミー、ジェネティクス、ニューロテックなどがある。こうした領域は、人間の進化にダイレクトにインパクトを与えることになる。

 例えばIoTの分野では、2020年にはIoTデバイスが500億台を超え、2030年にはデータトラフィックの半分以上がマシン間によるものになるといわれている。自動運転も進化の速い分野の1つ。自動運転の実現を加速させているのがセンサー技術である。以前は、NASAの研究レベルでなければ利用できなかった高性能なセンサーが、どんどん安価に利用できるようになっている。

 ロボティクスに関して齋藤氏は、「Pepperが、けん玉の練習をする動画がある。当初は、まったく剣先に玉を入れることができないが、数百回トライして1度成功したあとは、全く失敗することなく、剣先に玉を入れ続けることができる」と話す。脳科学やバイオテックにおいても、DNA検査の価格が劇的に低下したほか、ゲノム編集技術のCRISPRによる遺伝子組み換え価格も低下。これにより、絶滅した生物を復活させることもできる。

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