しかし3月調査の日銀短観もよくみると明るい部分もある。
2008年度の売上高は07年度に比べてプラスの伸びだが伸び率は少し落ちる。しかし、経常利益はそこそこしっかりした伸び率になっていて、08年度の売上高経常利益率は、全規模・全産業で4.10と07年度の4.06より上昇する見通しだ。損益分岐点の低下などで意外と企業に体力がついている可能性も考えられよう。
08年度の全産業・設備投資計画は大企業では前年度比マイナス1.6%、中小企業はマイナス24.2%。弱めに出る3月調査ではあるが、最近年の動きに比べ今年はかなり弱めであると言えそうだ。しかし、生産・営業用設備判断DIは概ね横這いで過剰感が高まる兆しはない。
また雇用判断DIも概ね横這いで、設備・雇用面での悪化は見られなかった。在庫水準判断も概ね横這いで、在庫調整の兆しなどは感じられない。
今回の短観は、設備判断・雇用面、在庫判断で底堅さも感じられるが、全体的にみて足元の企業の景況は数々の悪材料が出る中で弱めになっており、先行きに関しても不透明材料が多く、慎重なスタンスでしか見通しを立てられない状況にあることを示しているように思われる。
ところで、一部に景気後退説が出てきている。景気の山・谷を決める重要指標の1つが景気動向指数のヒストリカルDIだ。景気動向指数・一致系列の半分超の6系列が昨年11月末までにピークをつけた可能性がある。万一5月頃まで低下を続けるようだと景気後退と認定される可能性も否定は出来ない。
この春は景気動向にとって正念場だ。目先は、速報性・先行性のある「景気ウォッチャー調査」の動向も気になる。3月10日発表の2月分では現状判断DIが11カ月ぶりに上昇に転じた。現状判断DIの転換点は株価の転換点と概ね重なることが多いので、足元の明るい材料として注目されよう。
身近な社会現象で3月に弱含んだのがJRAの競馬の売上高だ。08年年初から2月までの累積売上高は前年比3.2%の増加で、年間売上げ11年ぶりの増加に向けて順調な動きと思われたが、年年初から3月までの累積売上高は前年比0.8%の減少に転じてしまった。ただし、3月30日開催のG1レースの高松宮記念の売上げは前年比5.8%としっかりだった。
大相撲春場所には地方場所として史上初の1千本台となる1073本の懸賞がかかったことも、企業が広告費をしっかりと支出していることを示すものだ。
日本流行色協会によれば、今年春・夏の流行色は黄色ということだ。黄色は景気拡張局面で流行することが多い。黄色が流行した1956年や72年、98年は景気拡張局面であった。こうした明るい動きが、足元微妙な景気を上向かせる牽引役として注目されて欲しいものだ。
たくもり・あきよし
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授