この春は景気動向にとって正念場だ。3月調査の日銀短観の「最近」の業況判断DIの動きをみると、一部に底堅い印象はあるものの予断は許さない。一方社会現象に目を向けてみると…
サブプライムローン問題による悪影響が広がっている。世界的な金融資本市場の混乱と信用収縮などの動きが日本の景気にも冷水を浴びせている。日本経済の場合、さらに建築基準法改正による住宅投資などの一時的な落ち込み、身近な商品の値上がりなどによる国内の消費者マインドの悪化など、懸念材料がある状況が続いてきている、3月には一時的だが原油価格・WTI(West Texas Intermediate)の1バレル=110ドル超や1ドル=95円台へ円高進行などさらに懸念材料が増した。
こうした中、企業の景況感がどうなっているかを判断する材料として注目されたのが3月調査の日銀短観だった。
3月調査の日銀短観の「最近」の業況判断DIの動きをみると、大企業・製造業の業況判断DIは11となり、前回12月調査19から8ポイント悪化した。また、12月調査の「先行き」の15と比べても4ポイント悪化した。想定したより弱い数字になったのは7四半期ぶりだ。サブプライムローン問題に端を発した世界的な信用不安や、円高、エネルギー価格高や原材料価格高などが、企業マインドの不透明さ拡大要因となって景況感は大きく低下した。
一方、大企業・非製造業の業況判断DIは12と、12月調査の16から4ポイント悪化した。足元の消費者心理は、ガソリン価格や生活必需品の価格上昇などが悪化原因となり弱含んでいるが、消費周りの業種である小売、対個人サービス、飲食店・宿泊などで業況判断DIは悪化した。建築基準法改正に伴う住宅投資や建物の設備投資の一時的落ち込みにより建設が前回調査に引き続き悪化した。
中小企業の業況判断DIも悪くなった。製造業がマイナス6と12月調査より8ポイントの悪化で04年3月調査以来4年ぶりにマイナスに転じた。非製造業はマイナス15と12月調査より3ポイント悪化となった。この結果、全規模・全産業の業況判断DIはマイナス4と、12月調査の2から6ポイント悪化した。企業の景況感が足元悪化していることを裏付けた。
大企業・製造業の「先行き」業況判断は7と「最近」より4ポイントの悪化見通しである。自動車が21ポイント「最近」よりの悪化見通しであることなどが気懸かりである。大企業・非製造業は13と、こちらは1ポイントだが改善予想である。建設は建築基準法改正の影響が一段落するので「最近」より7ポイント改善と見ているようだ。
中小企業・製造業では「先行き」業況判断は「最近」より3ポイント悪化、中小企業・非製造業では「先行き」業況判断は「最近」より6ポイントの悪化見通しである。全規模・全産業では3ポイントの悪化見通しである。企業の景況感は一部を除き先行きも悪化という見通しだ
大企業・製造業の仕入れ価格DIは50で80年8月以来、中小企業・製造業の仕入れ価格DIは63で80年5月以来と、原材料価格の上昇を受けて第2次石油危機以来の「上昇」超になった。収益悪化要因である。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授