ITサービスのトレンドは日々進化を続けているわけだが、それを様々なITサービスベンダーが提唱する新しいコンセプトや構想からとらえるのと、実際に企業など顧客の現場で行われていることからとらえるのとでは、その様相はかなり異なってくる。特にここ最近の状況においては、その「乖離」とでも呼べるものが少しずつ際立ってきているように思える。
その要因としては、やはりインターネットの影響は極めて大きい。インターネットによって企業向けを中心としたITサービスのモデルやスタイルは、根底から変わろうとしている。インターネットの拡大を背景に、新興企業が提唱する新しいトレンドが説得力を持つようになり、それが従来ベンダーのスタンスにも大きな影響を与えているわけだ。
しかし、こうした状況において、実際にITサービスを利用する顧客にとっては、これからのITのあり方についてどの様に考えればいいのかは、悩みが深まる一方でもある。並行して、サービスやコンポーネントベンダーの競争構造も複雑になるなか、少し大げさに言えば、ベンダー自身ですら、これからのITサービスの方向性を見失いつつある状況がある様に思える。
本来であれば、自社の強みをベースにした明確なモデルを提示し、今後のサービストレンドに関して顧客をリードする役割が、ITベンダーには求められるわけだが、ともすれば現在いわれているどの様な方向性にも対応できるというコンセプトだけが先行的に発信され、具体的なプロダクトや実績についてはお粗末なケースも少なからず見受けられる。
その意味で、業界のトップを行くIBMやHPは、これからのITサービスの方向性をどの様に考えているのだろうか。客観的な立場からこの問いに対して明確な回答を出すのは難しい。例えば「アウトソーシング」だと答えるのは最も無難なやり方ではあるが、もはやそれだけではあまりに漠然としすぎている。アウトソーシングを新しい側面でとらえるか、時代遅れとはいわないまでも必ずしも将来性が明確でないものだととらえるかは、人によって見方が異なるだろう。
なりかわ・やすのり 1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授