おおかたの期待を裏切り北京五輪4位に終わった野球。なぜ星野ジャパンは勝てなかったのか? 企業における組織のあり方から考えてみたい。
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北京オリンピックで念願の金メダルを獲得した女子ソフトボールチーム。優勝の瞬間には、多くの人が大きな感動を覚えたのではないだろうか。一方で、人気や才能を兼ね備えたプロ野球選手を集めた星野ジャパンは、メダルを獲れないという結果に終わった。
その違いは、何だったのだろうか? わたしは、「組織遂行力」を発揮できたかどうかだと考えている。
組織遂行力とは、「組織のゴールに向かってメンバー全員が、一致協力して決めた戦術を実行し、成果を出し続ける力」である。リーダーの人に肝に銘じてほしいことがある。いくら個々人の能力が高くても、この組織遂行力のない組織では、成果を出すことはできない。
能力の高い人が集まっているにもかかわらず、業績がまったく上がらない組織が数多くある。能力の高い人がいるからといって、必ずしも組織の能力が高くなるとは限らない。なぜなら、それぞれの能力が発揮されていないのである。
その主な原因は、次の4つである。
星野ジャパンと女子ソフトボールチームの違いは、この組織遂行力があったかどうかの違いである。女子ソフトボールチームは、ゴールに向かって、皆が一致団結して、力を発揮した。アメリカに勝って金メダルを獲ることを目指し、前回のアテネオリンピック以降、アメリカチームをはじめ、多くのチームを徹底的に研究した。準備を怠らず、勝つ戦術をしっかりと練った。そして、世界一になるという目標を掲げ、エース・上野投手を中心に皆が協力し合った。
また、お互いに腹の底から議論し、情報を共有し、信頼関係ができていたのである。信頼関係とは、メンバーの強いところも弱いところも、それぞれがよく分かり、相互理解していたということである。話し合い、議論することで、揺ぎない信頼関係を築き上げたのである。
勝つためには、時には意見がぶつかることも、けんかをすることもある。しかし、それはすべて金メダルを獲るというゴールのためであり、全員がそのことを認識している。全員がゴールに向かって協力して、決めた戦術を実行し成果を出した――組織遂行力が発揮できたのである。
一方、星野ジャパンはどうだろうか。
一流のプロ野球選手を集め、金メダルを獲って当たり前と言われたが、勝つための準備を十分にできていただろうか? しっかりとした戦術や戦略が練られていただろうか? その戦術をしっかりと実践・実行していっただろうか。お互いの信頼関係が出来上がっていただろうか。けんかするくらい、たくさん議論をしただろうか。
一人ひとりの能力が高くても、同じゴールに向かわないと金メダルは獲れない――組織力は発揮されないのである。女子ソフトボールチームと星野ジャパンの姿は、組織遂行力の大切さを改めて認識させてくれるものである。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授