「経営に面白さを感じる会社はあるか?」という質問を投げ掛けたところ、大学生も経験豊富なビジネスマンも同じく国内の優良企業を挙げた。視野を広げるためには果たしてこれでいいのだろうか。
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「わが社、わが事業部の将来を考えていく上で、このX社および同社のY事業部の経営手法は非常に参考になる。ぜひとも勉強して、自らの経営に生かしていきたい」
もしあなたが現在、全社あるいは事業部のトップのポジションにいる、あるいは将来、そうしたポジションに就きたいと思う人であれば、X社、Y事業部には何が該当するだろうか?
筆者が所属する和歌山大学経済学部では、毎年この時期になると来年度のゼミナール生を募集する。ゼミの進め方などが学内に掲示され、個々の学生が希望するゼミを選択する。「懐かしい光景」と思う読者もいるだろう。受講者数があまりに多いと、ゼミ形式での教育の良さが薄れてしまうため、同学部ではゼミ生の数に上限(8名)を設けている。
今回はありがたいことに、上限を超す数の学生が集まった。そのため、希望者を面接して、(申し訳ないことだが)選抜した。わたしのゼミでは、企業経営、とくに経営戦略にかかわるトピックスを取り扱うことにしている。そのため面接では「卒業論文で事例分析したい会社、あるいは経営が面白いと思える会社はありますか?」との質問を投げてみた。
返答はほぼ予想通りのものであった。この手の面接は何度か実施してきたが、予想が覆ることは皆無である(こちらが身を乗り出してしまうような事例を取り上げ、筆者に情報提供してくれる学生も時にはいるが)。トヨタ自動車、ユニクロ、セブン−イレブン、NTTドコモ、ソフトバンク……。実家から近いのでパナソニック、父親が勤務しているのでシャープ、という学生もいた。
筆者が講師として手伝うミドルマネジャー向けの経営研修では、自らが所属する会社あるいは事業部門の経営課題を見つけ出し、その解決につながるヒントをいずこからか探し出し、それをベンチマークにするといった取り組みを数年にわたり続けている。
探し出した結果は意外なものだった。候補として挙げられた企業の多くは、学生の返答と似通ったものだったからだ。トヨタ自動車をはじめ、いわゆる「国際優良銘柄」と称される会社をベンチマークしようとする声が大半を占めてしまった。学生と異なるのは、例えば信越化学工業など日常生活とは縁遠い会社だが長らく優良企業として知られた会社が候補となるぐらいであろう。
ゼミの面接の対象となるのは、大学2年生である。そうした若い学生が注目する企業と、経験豊富なビジネスマンが注目する企業がなぜ似通ってしまうのか。学生にもよく知られるほどの有名、優良企業であれば、ベンチマークの対象として無難だと判断するビジネスマンが多いのかもしれない。
または、「名前がよく取り上げられている=公刊情報が多い」といった考えが働き、効率良く(あるいは手っ取り早く)調査ができると判断したかもしれない。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授