経営環境の変化に対応できないトップは埋没する間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)

» 2008年12月24日 07時45分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]
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顧客の声を直接手に入れろ

 顧客の要求も厳しくなっている。プロダクトアウトでなくマーケットインだということが語られて久しいが、今はそんな単純なことでは済まない。いくつもの新製品が生まれては消えていく。理屈通り市場のニーズを調査して開発した新製品が、顧客から見向きもされない例は山ほどある。閉塞感に覆われた市場でニーズは簡単には見つからない。音楽プレイヤー「iPod」にしても映画「崖の上のポニョ」にしても、企業側からの提案によって顧客は目を覚ました。顧客のニーズにマッチしたというのは、いつも評論家の後付けだ。

 そうはいっても、企業からの提案が市場を無視しては結局相手にされない。インターネットを通じて顧客情報が集まり、インターネットの掲示板サイトで製品の評判が持ち上がり、インターネット上の比較サイトで製品の価格から性能、使い勝手、品質、デザイン、機能などが比較されるなど、顧客からの情報が直接手に入る時代である。インタ−ネットを活用しない手はない。

 例えばPCメーカー・Dellによるインターネット上の直接販売は、新しいビジネスモデルの典型だ。インターネットで注文すると、自分の好みでコンポーネントを組み合わせた製品が出来上がる。購入後のトラブルはインターネットや電話により、中国を拠点としたコールセンターの対応で、痒い所に手が届くほどの親切さで応えてくれる。後日、フォローアップの電話さえある。まさに顧客の要求に応えた、グローバルなビジネスモデルだ。

ITに無頓着な経営者では生き残れない

 技術の進歩も目覚しい。IT技術の急速な進歩に無頓着だったり、敬遠したりするトップは、IT利用によるビジネスチャンスを逃している。たとえ製造技術やサービス技術に関心があっても、小難しいIT技術から距離を置くトップは珍しくない。

 ITは、ハード、ソフト共に大変な進歩を遂げている。光ファイバーなどによる通信ネットワークの高速化、パソコンの高性能化、グリッドコンピューティング、クラウドコンピューティング、モバイル、RFID(ICタグを活用した情報通信)など、ITの活用で時空を超えることができる。加えて、パッケージソフトの登場、ASP、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)などにより安価なアプリケーションの利用が可能になっている。単なる効率化や全体最適から、資産の最大化や価値の創造へと、ソフトウェアが目指すものは高度化している。進化したITは、利用の仕方によってはいくらでも役に立つ。

 以上のように、経営環境が激変する時代を生き抜くには、グローバルレベルで変化する環境や多様化する顧客に果敢に挑戦し、俊足の進歩を遂げるIT技術を巧みに活用しなければならない。それに気付き、実行に移すことのできるトップだけが生き残るのだ。


プロフィール

増岡直二郎(ますおか なおじろう)

日立製作所、八木アンテナ、八木システムエンジニアリングを経て現在、「nao IT研究所」代表。その間経営、事業企画、製造、情報システム、営業統括、保守などの部門を経験し、IT導入にも直接かかわってきた。執筆・講演・大学非常勤講師・企業指導などで活躍中。著書に「IT導入は企業を危うくする」(洋泉社)、「迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件」(洋泉社)。


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