日本IBMの橋本孝之新社長が、2009年の経営方針を説明した。景気の悪化に負けない企業体制の構築を目指し基礎固めを優先しながら、顧客営業の強化にも乗り出すなど、新生IBMの礎を築く1年にする。
「社員が自由闊達(かったつ)に働き、顧客の喜びを見いだせるような体制にしたい」。2月19日に開かれた日本IBMの2009年の方針説明会で、橋本孝之社長は声を張った。前社長の大歳卓麻氏からバトンを引き継ぎ1月1日付けで新社長に就任、その後の舵取りが注目を集めている。橋本社長は、2009年を「(日本IBMの)新たな礎を築く年」(橋本社長)と位置付け、経営手法に言及した。
橋本社長が2009年に一番力を入れると公言したのは、企業文化の改善だ。世界的な経済の悪化を背景に「社会がこれまでと違う価値観で動く」(橋本社長)ことを実感、改めて社内体制の基礎固めを進める考えに行き着いた。
社長就任後には、役員や事業部部長クラスに各自の業務実践目標を表明してもらったという。それを社内のイントラネットに公開し、公平な評価を下すようにした。また、業績関連を話し合う会議を水曜日に固め、それ以外の平日は営業活動に時間をあてられるようにした。社員の営業活動をオンタイムで評価し、優秀者には記念品を贈呈するといった取り組みにも着手した。「トップと現場の距離を縮める」(橋本社長)ことを目指し、企業文化を再構築する。
新規顧客の開拓にも力を入れる。具体的にはGTS(グローバル・テクノロジー・サービス)事業のてこ入れを図り、同事業内に新規アウトソーシング契約を専門で手掛ける30人体制の部門を新設した。「景気低迷によりアウトソーシングへの需要が増える」(橋本社長)と判断し、顧客営業部門の強化に力点を置く。パートナー企業との協業では、顧客の経営層と相談し、経営の支援ができる「エグゼクティブクラスの人材」(同)を積極的に投入する意向を示した。
サービスの提供では、「金融危機というトンネルを抜ける前と抜けた後」(橋本社長)の支援強化を掲げる。景気悪化がもたらす経営へ影響を改善するために、IBMビジネスコンサルティング サービスとコスト削減のコンサルティングサービスを提供する。投資効果が見込まれる具体策を最短2週間で策定するなど、短期的な経営の立て直しを支援する。
トンネルを抜けた後の施策としては、サプライチェーンや食糧問題、環境対策などのマクロな問題の解決を目指し、3月2日に「Japan Business Solution Center」を同社大和事業所に開設する。ここでは、環境関連やグローバル規模の経営を管理するサービス、クラウドコンピューティングで構築するIT基盤のサービスなどを提供する。「IBMの最先端かつ中核を担う技術やサービスで、顧客の業務プロセス全体の改善を進める」(橋本社長)組織となる。
橋本社長は景気の悪化を前向きにとらえているという。ライバルとなる国内の大手ITベンダーが苦戦を強いられる中、「グローバル規模で展開するIBMの組織的な能力を集めて顧客の経営に踏み込めば、ほかの企業にはない提案ができる」と意気込みを語った。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授