「赤字を消すために人殺し以外は何でもやれ!」――経営現場にはびこる勘違い生き残れない経営(1/2 ページ)

アメリカから入ってきた成果至上主義が日本企業にまん延し、経営者やリーダーの号令の下、従業員は企業の理念を忘れ、利益に目を血走らせている。こうした企業が未来永劫生き残っていくのだろうか。

» 2009年04月03日 08時30分 公開
[増岡直二郎(nao IT研究所),ITmedia]

 ビジネスの現場で、いかに勘違いの経営が行われていることか。致命的な勘違いは言うまでもなく、たとえ小さな勘違いでもそれがたび重なると企業の発展はおろか、存続さえも危うくする。そうした企業の経営者に限ってその勘違いを正しいと思い込んでいるから、一層手が付けられない。新連載「生き残れない経営」では、経営現場の実態を暴きながら、解決策を講じていきたい。


 勘違いには、経営理念や経営姿勢に関するものと、経営手法に関するものがある。

 そもそも経営理念を議論するとき、経営を取り巻く環境をどのように把握するかということが重要で、そうでなければ前へ進めない。次に企業の使命を改めて見つめ直す必要がある。利益を上げ納税するのが企業の最低限の使命だとしても、トップから企業の社会的責任(CSR)や公正かつ透明で健全なビジネスについて演説される一方で、第一線の現場では朝から晩まで「受注を増やせ」「赤字は絶対許されない」と叫び続けられては、担当者は理想を忘れ、現実のもうけに奔走するのは当然だ。

日本型経営が失われつつある

 「赤字解消のために、人殺し以外は何でもやれ」と叫び続けた製造課長が現実に存在した。戦後にアメリカ型の経営理念が流行して、日本型経営理念は罪悪視されるようにさえなった。企業のステークホールダーの中で株主が最重視され、顧客や従業員などは順位を下げた。短期の業績が重視されたり、株主などから経営責任を問われたりすることから、経営者は目先の利益に注がれるようになった。製品に対する忠誠心、技術の伝承、人材の教育など重要なことがなおざりにされる仕組みになった。メーカーの現場を歩くと、その現実が身に突き刺さってくる。日本型経営の利点が忘れられたのだ。

 しきりに顧客満足(Customer Satisfaction)やCSRが声高に叫ばれている。しかし、社員が会社について根強い不満を抱えている場合、顧客のことを第一に考えろ、企業の社会的責任を考えろと言われても無理がある。トップが「顧客に顔を向けろ」、「儲けではなく善悪を判断基準にしろ」と説いても、「ハイ」という返事の裏で会社に対する不満が頭を占領していてはぬかに釘だ。

 ところで、CS、CSRなどなぜこれほど英文字が使われなければならないのか。英文字を使うことが格好良くて、経営の最先端を走っているように思われる風潮そのものが問題である。何年か前に老課長が部下に対して「“ピジョン”を持たなければダメだ」と説いているのに失笑したものだ。

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