多くの企業はビジネスチャンスを大雑把にとらえており、それが成長の足かせとなってしまっている。実像を正確に把握し、粒度の高い経営戦略を打ち出すことが不況下の今求められている。
企業が存続するために必要なもの――何よりもまず「成長」であることに疑問の余地はないだろう。世にあふれるビジネス書の内容は、誤解を恐れずに言えば「どうすれば会社が成長できるのか」という疑問に対する、さまざまな角度からの回答に尽きる。
本書もまた、企業が成長するためには何をすべきかという方法論を提示する。著者は、世界最高峰のコンサルティングファーム、マッキンゼー&カンパニーで現場を仕切っている現役のディレクター2人と、同社のパートナーを務めた後、現在は自らのコンサルティングファームを経営する1人。現場を誰よりもよく知る彼らは、机上の空論に陥らず、本当に使える成長への処方せんを提供している。
1つのキーワードが「グラニュラリティー」だ。グラニュラリティーとは、システムの構成部分の大きさを意味する言葉で「粒度」とも訳される。本来は工学分野などで使われる用語だ。地球を例に取れば、大陸→国→州→県→市→町→村というように粒度が上がっていく。では、成長のための粒度の高い経営戦略とは、どのようなものであろうか。
著者によると、多くの企業がビジネスチャンスを大雑把にとらえていることが問題だという。特に大企業においては「今は中国が熱い」「医薬品は高成長産業だ」「高齢化がヘルスケアの需要拡大をもたらす」といった過度の一般化が顕著だが、実のところ、こうした考え方はほとんど役に立たない。
成長産業の中にも、ほとんどの場合、成熟化したセグメントがある。逆に既に成熟し切ったと言われる産業にも、実は成長の機会が存在する。高齢化のようなメガトレンドも市場によってその実相は大きく異なることが見えてくるのだ。真の勝利の方程式は、市場のセグメントとそのニーズ、それを満たすのに必要な能力をつぶさに理解することからしか生まれない。
「100年に1度の経済危機」と言われる今、守勢に回る企業は多いが、市場が収縮する不況の今こそ、継続企業は成長について真剣に考えるべきだ。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授