【第3回】継続して経営の質を進化させる10のキーワード21世紀市場を勝ち抜くIT経営(3/3 ページ)

» 2009年09月01日 08時15分 公開
[上村孝樹(ジャーナリスト),ITmedia]
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経営の自立化とオープン化

 ITの高度活用で素晴らしいビジネスモデルが構築されればそれでおしまい、ということにはならない。そのビジネスモデルを実行しても、「経営の自立化」「経営のオープン化」が達成されなければ、付加価値向上は継続していかない。これら2つが第8のキーワードである。

 経営の自立化は、例えば製造業ならば、受注、設計、製造、物流、会計など(1)顧客から見たすべてのビジネス機能を仮想的に自己完結させること、(2)製品のオリジナリティ度を高める、(3)市場開拓力を持つ、(4)顧客の分散化を図る、(5)提案力を向上させる、などが含まれる。これらによって企業を市場環境の変化に影響を受けにくい強い企業に育てることができる。

 経営のオープン化は、(1)社内に対してビジネスの状況や決算の情報を詳細に公開・共有など、(2)取引先とのビジネスにかかわるリソース情報・仕事の進捗情報の共有、仕事の結果のフィードバックなど、(3)顧客に対しての情報提供・取引履歴や進捗情報の提供など、(4)社会に対しての決算・コンプライアンスにかかわる情報の公開、などが含まれる。

 これらによって社員のやる気を高め、さらに取引先、顧客、社会との信頼関係を築くことができる。経営のオープン化度が向上すれば、組織のフラット化、仮想化が推進され、コストの削減や人材の有効活用が図られるメリットが生まれる。

 以上の取り組みが成功すれば、最終的に4つの満足度が大きく向上することになる。その4つとは、「顧客満足度(CS)」、「従業員満足度(ES)」、「ビジネス・パートナー満足度(PS)」、そして「社会的存在としての満足度(SS)」である。これらが9番目のキーワードとなる。この中で特に重視すべきものはESである。ESが低ければ従業員のモチベーションは下がりビジネスモデルをタイムリーに改変する力が失われる。ESを高めればCSやPS、SSを高める力が生まれ、企業は付加価値向上型にスムーズに転換していくことが可能となる。

 4つの満足度向上が達成されると業績向上の効果が生まれる。付加価値が向上するために経常利益率も向上し10%を超えることも不可能ではなくなる。「経常利益率10%」が第10のキーワードである。かつて中小企業が10%の利益率を達成することは夢と言われたこともあったが、21世紀市場で勝ち残る付加価値向上戦略を「仮説検証して進化させる」ことが継続できれば、確実に達成できる目標となるのだ。


著者プロフィール

上村孝樹(かみむら たかき)

ジャーナリスト/経営・ビジネスアドバイザー

1949年新潟県生まれ。青山学院大学経済学部卒業。日本ビジネスコンサルタント(現日立情報システムズ)を経て、1980年、日経マグロウヒル(現日経BP社)に入社。81年日経コンピュータ誌創刊とともに、同誌編集部記者、同副編集長を経て、93年3月、日経情報ストラテジー編集長。95年5月から同誌発行人を兼任。98年3月にコンピュータ局主席編集委員。2003年1月、日経アドバンテージ編集長、同年3月発行人を兼任。2005年4月、日経BP社を退職し、フリーとしてジャーナリスト/コンサルティング活動開始。2004年から金沢工業大学大学院客員教授に就任。2007年から事業創造大学院大学のIT経営講座・主任教授に就任、同年年5月から「IT経営講座」を開講している。



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