かつての名門企業であるGMが、今年に入り米連邦破産法11条の適用を政府に申請したことからも、経営の舵を取ることがますます難しくなっていることが伺えよう。変化への対応の鍵――それは、ITの活用にほかならないと横溝氏は訴える。
Microsoft会長、ビル・ゲイツ氏が自身の著書「思考スピードの経営」において引用した言葉に、次のようなものがある。
「連続的に変化している技術や市場などに関して事実を見いだし、了解することはビジネスの判断をする上でとても大切なことである。近代の技術の変化の早さは、事実の探求を普遍的に必須の要件としている」
これは、General Motors(GM)の社長を長年にわたり務め、同社を世界最大のメーカーに発展させることに貢献した名経営者の1人であるアルフレッド・P・スローン・ジュニア氏によるもの。同氏によってGMは大量生産方式を洗練させ、かつ、利益率を上げるための新たな会計手法を導入することなどを通じ、かつては他社に対する圧倒的な競争優位を確立することに成功した。
だが、今年6月には同社も日本の民事再生法にあたる、米連邦破産法11条の適用を政府に申請。名門企業のこの凋落ぶりから、経営環境が厳しくなる中での経営の舵を取ることの難しさを改めて理解できよう。
では、その荒波を乗り越えるために、企業には果たして何が求められているのか。ローソンで常務執行役員 CIO(最高情報責任者)を務める横溝陽一氏は、「第10回ITmedia エグゼクティブセミナー」の基調講演に登壇し、この疑問に対して次のような見解を披露した。
「変化はその中にあっては、極めて認識することが難しく、得てして企業は“ゆでがえる”の状況に陥りがちだ。そうした事態を避けるためには、事実を把握することの重要性を社員に徹底的に認識させるとともに、状況を把握するための仕組みの整備が不可欠。その結果、新たな成長軌道にいざなう情報を軸としたイノベーションが企業にもたらされるのだ」
コンビニエンスストア大手のローソンの特徴は、同社の掲げる顧客起点のマチにあった出店戦略とフォーマット戦略に見て取れる。具体的には、コンビニエンス業界では47都道府県のすべてに店舗を展開した最初のCVSチェーンであり、また、ショップ99やローソンストア100、ナチュラルローソンといったレギュラー・ローソン以外の店舗を展開することで、商品や店舗レイアウトなどのフォーマットを互いに補完し合い、多様なニーズへの対応を図っているのだ。
実際に、ローソン1つとっても病院内の「ホスピタルローソン」や大学内の「大学内ローソン」、東京メトロと提携した「地下鉄ローソン」などいくつもの種類が存在する。
「流通業が置かれた状況は厳しい。現実に当社でも、2000年を境に店舗数と総売上高の伸びが鈍化している。だが、そうした中にあっても利益を確保することは企業として不可欠。当社の掲げる戦略は、顧客の求めるものに合わせてソリューションを迅速に展開できるようにするためのものであるのだ」(横溝氏)
もっとも、企業が生き残るためには、単に強みを磨くのみならず、変化への対応能力を高めることを欠かすことができない。そのためには、顧客の“気まぐれ”とも思えるニーズの変化にも柔軟に対応する必要があり、CIOは「ITをいかに使うか」、「ITの利用を通じ何を提供するか」という2つの視点から、この課題に取り組む必要があるとると横溝氏は説く。
事実、横溝氏はこの考えにのっとり、2008年3月には社内役員合宿において業務改革を推進するにあたっての3つの問題を提起。1つ目は、情報を軸として現在の業務をどのように改革すべきか。2つ目は、店舗のWebの立ち上げを通じて顧客のニーズをいかに把握し、増収や接客に結び付けられるか。3つ目は、世の中で使われているITのうち、ローソンで活用すべきものはあるか、である。
そして、最終的にまとめられた“顧客に選ばれるローソン”の実現に向けた施策が、(1)Webベースの次世代ITシステム「ローソン3.0」の整備、(2)ローソン3.0での業務改革「PRiSM」の推進、(3)分析力を武器とする企業になることを目的とした「Intelligence Competency Center」の具現化である。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授