――海外における日本のコンビニの強みとは何でしょうか。
井上 清潔で気の利いた店、そしてホスピタリティあふれる接客です。そうした日本の文化を現地のスタッフに教育しています。その一環として、「気軽にこころの豊かさ」というファミリーマートブランドの理念をお客さまに提案することを通じて、お客さまに選ばれるファミリーマートになるための当社のブランディング活動「らしさ推進活動プロジェクト」を海外の店舗でも展開し始めました。特に社員のホスピタリティ向上や、地元の小学生に店員を体験してもらうといった社会貢献活動などに力を入れています。
こうした活動を通じて感じるのは、日本も韓国も台湾も民度が同じだということです。ですから、CSR(企業の社会的責任)の重要性も海外では浸透してきています。
――日本で培ったノウハウやビジネスモデルは海外で横展開できるのでしょうか。
井上 基本的には現地に合ったものを作るべきです。そこに日本の良さや、ノウハウ、習慣を持ちこむのです。現地化しなければローカルの消費者には愛されませんし、現地に根付いたものを作らなければ定着しません。当社が販売するおでんを例にとっても、タイではトムヤンクン味だったり、中国だとカレー味だったりと、同じ商品なのに地域でまるで違います。
コンビニのビジネスはローカルなビジネスなのです。必ずしもインターナショナルマーケットではなく、地元の人に店舗を気に入ってもらい、商品を買ってもらわなければ成り立ちません。消費者から信頼を得て、現地で定着するには時間がかかります。
一方で、グローバルでサービスの統合も進めています。プロジェクトチームを立ち上げ、日本で開催するコンサートのチケットを海外の店舗端末で発券できたり、日本の「ファミマTポイント」を海外店舗で買い物したときにも加算、利用できたりする仕組み作りを検討しています。
――中国では時間通り正確に荷物を運べないなど、企業からはロジスティクスに関する悩みを聞きます。
井上 当社はまだ展開しているエリアが狭いので、大きな影響は出ていません。ただし、上海などでは交通規制により昼間は街中にトラックが入れないため、店舗への配送は1日に1回が限度です。日本では1日3便あるためロスが出ない仕組みになっていますが、1便だと発注数をコントロールするのが大変ですし、配送中にトラブルが起きれば取り返しがつきません。せめてもう1便増やせればと思っています。
こうしたロジスティクスを支えるのがシステムです。コンビニはまさにシステム産業と言えるでしょう。わたしは伊藤忠商事時代にIT部門を担当していたこともありますが、コンビニ業界のシステムのシビアさはほかの産業と比べて群を抜いています。システムが止まれば、物流がすべてストップし店舗に商品が届かなくなるのです。幸い、日本は高度な仕組みが出来上がっており、工場と物流会社と店舗の3者の役割が明確で、調和がとれています。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授